経済産業省がエネルギー基本計画の見直しに着手した。2014年の前回計画決定から約3年。エネルギーを取り巻く情勢は大きく変化し、政策の大変革が急務なのだが、小手先の見直しに終わりかねない状況だ。時代の要請に応え、民意に即した革新的なエネルギー政策をつくるために、議論の進め方から根本的に改革をする必要がある。

 現在の基本計画は、矛盾に満ちた内容になっている。最大の矛盾は原子力の扱いだ。東京電力福島第1原発事故を受け、「原発依存度の可能な限りの低減」を「エネルギー政策を再構築するための出発点」だとする一方、原子力は「エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」だとして、再稼働を進めるとしている。

 計画に基づいて定められた30年度の電源構成では原子力の比率は20~22%である。これは東電福島第2原発を含めて既存の原発のほとんどを再稼働させ、多くの原発の寿命を現在では特例とされている60年にまで延長しなければ実現できない数字だ。これを誰が「依存度の低減」だと見るだろうか。

 地球温暖化対策の重要性をうたう一方、「可能な限り拡大する」とした再生可能エネルギーの目標は22~24%と低めに抑えられた。逆に石炭火力発電の比率は26%と高く、電力会社が多くの石炭火力発電の新設に動く結果を招いた。

 3年間を振り返ると、電力需要は政府の見通しを下回り、原発の再稼働が進まない中、再生可能エネルギーが急拡大して、経済成長にもかかわらず二酸化炭素排出量は減少した。世論調査では、脱原発を求める意見が過半を占める状況が続き、再稼働は進んでいない。

 世界に目を転じれば、今世紀後半に脱化石燃料を実現することを長期目標に掲げたパリ協定が発効。原発のコストが高騰して、米国やフランスを含めた各国で原発利用の見直しや建設断念の動きが目立つ。

 逆に再生可能エネルギーは急拡大し、コストが急激に低くなっている。パリ協定を受け、石炭火力の全廃を打ち出す国も相次いだ。

 どう考えても現行計画と電源構成は時代遅れで現実離れしたものとなっているのだが、世耕弘成経産相が「計画の骨格は変えず、電源構成目標をどう達成するかを議論する」と述べるなど、今から小手先の見直し、文言いじりに終わらせるとの姿勢が見える。

 検討の場が、経産相の私的諮問機関、総合資源エネルギー調査会の分科会であることも問題だ。役人が恣意(しい)的に決めた委員の大半は、経産省に近い研究者か大企業の代表が占めている。今回、新たに脱原発派とされる委員も加えた「エネルギー情勢懇談会」なるものも発足させたが、その位置付けは不明確で「ガス抜きやアリバイづくりにすぎない」との批判が聞かれる。これが真に民主的なエネルギー政策を議論する場だとは到底、言えない。

 世界各国が再生可能エネルギーを中心にエネルギーの脱炭素化に動き始め、多くの企業がそこに巨大なビジネスチャンスを見いだしている。今、日本の政治家がエネルギーの需給構造を大変革するのだとの明確なメッセージを発しなければ、日本は始まった世界規模の競争の中で、後塵(こうじん)を拝することになるだろう。(共同通信・井田徹治)

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