小麦価格が約10年ぶりの安値圏にあるなど主要穀物の国際相場が下落している。米国やロシアなど主産地が好天で豊作が見込まれることに加えて、最大消費地である中国の景気減速やエネルギー価格の低下で需要が伸び悩んでいるからだ。食用や飼料用の穀物を輸入に頼る日本に恩恵となる一方、主産地の農家収入には打撃で世界経済の波乱要因となる懸念もある。【共同】 

 夏場に収穫期を迎えた小麦は、世界の主産地で生産量が拡大している。指標となるシカゴ相場は、7月に1ブッシェル(約27キロ)当たり4ドル近辺と、2006年9月以来の水準まで下がった。

 米農務省によると、トウモロコシは世界最大の産地である米国で今年は過去最高の収穫量となる見通し。アルゼンチンやインドでも生産が伸びており、価格は約7年ぶりの低水準となっている。ガソリン安でバイオ燃料のエタノール向け需要が低迷していることも、トウモロコシ価格が軟調な原因だ。

 一方、大豆相場は中国の消費が引き続き増えていることなどから比較的底堅く推移している。

 穀物の生産拡大と需要の頭打ちで、世界の食料価格も下落基調となっている。国連食糧農業機関(FAO)の穀物価格指数は、今年に入り10年ぶりの低水準だ。FAOは今後についても「上昇に転じる可能性は限られている」と分析している。

 日銀による7月の輸入物価指数(速報)は、食料品・飼料が円ベースで前年同月比15・2%下落した。円高の進行も手伝い、10カ月連続のマイナスだ。農林水産省は、今年4~9月期の輸入小麦の政府売り渡し価格を2期連続で引き下げた。

 穀物価格の下落に、需要拡大を見込んで作付けを増やしてきた農家は悲鳴を上げている。米農務省は、16年の米国内農家の収入が02年以来で最も低くなると推計。全米トウモロコシ生産者協会のボーリング会長は、現状が続けば「農家は職を失い、経済的な困難に直面する」として政府に支援を求めている。

【シカゴ穀物相場】先物取引を手掛けるシカゴ商品取引所で形成される穀物の取引価格。同取引所の設立は1848年。米国が世界最大の産地であるトウモロコシをはじめ、小麦や大豆など主要穀物のシカゴ相場は、国際的な取引の代表的な指標となっている。米農務省が毎月公表する米国と世界の農産物需給見通しが、価格形成に大きな影響を及ぼす。穀物の生産量は天候に大きく左右されるため、米国の中長期の天気予報が相場の重要な予測材料となっている。

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