共謀罪の構成要件を厳しくした「テロ等準備罪」の新設法案を巡る国会審議では、政府が締結を目指す国際組織犯罪防止条約の要請に応えるため、国内の法律を変えるべきかどうかが争点になっている。300弱の犯罪を包括的にテロ等準備罪の対象としたい政府に対し、民進党は「現行法のままでも条約締結は可能」と主張。法改正が必要だとしても最低限にすべきだとしており、議論は平行線だ。【共同】

 条約は「重大な犯罪の合意(共謀)」などを法律で犯罪とするよう求め、重大犯罪の定義を「4年以上の懲役・禁錮を定めている罪」と規定。これを日本の現行法に当てはめると、対象犯罪は676に上る。公明党から「広過ぎる」と懸念が示されたため、政府は直接テロの手段になり得る犯罪を中心に、約270に絞り込んで法案を提出する方針だ。

◆必要性

 犯罪には一般的に共謀(計画)-予備・準備-未遂-既遂の4段階がある。日本の刑法は犯罪の実行を罰するのが原則だが、法相の国会答弁によると、現行法に未遂より前の段階で処罰できる罪は66存在している。

 民進党は、これに加えて個別の法律ごとに必要性を検討し、一部に予備罪を新設するなどすれば条約の要請を満たすことができると主張。法務省刑事局長は国会で「より多くの罪に予備罪を設けるだけでは、一刻一秒を争うテロ対策としては不十分だ。条約の規定からも締結は難しい」と反論した。

 今国会に提出予定の法案は、犯罪を計画しただけでなく、現場の下見や銃器購入資金の調達などの「準備行為」がないと処罰できない内容になる見通し。

 法案の準備行為と、殺人予備や強盗予備など現行法の「予備罪」「準備罪」を成立させる行為は何が違うのか。判例によると、現行法の予備、準備行為は「客観的に相当の危険性が認められる程度の準備」であることが必要とされ、今回の法案の準備行為は、その段階に至っていない行為にも適用される。

◆説得力

 政府は、現行法では的確に対処できない事例として、テロ組織が(1)化学薬品による大量殺人を計画し、原料の一部を入手(2)飛行機を乗っ取って高層ビルに突撃させる計画をし、航空券を予約-などの例を挙げている。金田勝年法相も国会答弁の中で、これらを法整備の根拠として挙げた。

 これに対し民進党は、それぞれ「サリン等人身被害防止法」や「ハイジャック防止法」の予備罪などで対応できると指摘。政府は「予備罪は限定的に解釈されるので、航空券の購入などでは成立しないケースもある。予備罪が設けられていない犯罪も多い」と強調している。

 民進党は現行法では対処できないケースを他にも示すよう求めている。政府が法案提出後、説得力ある事例を示せるかどうかが焦点の一つになりそうだ。

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