松浦市内の漁協支所に掲げられた原発再稼働反対の看板。周辺自治体住民には置き去りにされた民意の行方を問う声が上がる=長崎県松浦市今福町

■反対しても「蚊帳の外」

 玄海原発3、4号機の再稼働同意を表明した24日の知事会見。「周辺自治体の反対をどう考えて今日の判断に至ったのか」。記者の問いに、山口祥義知事は「地域振興的な税などは一切考えなかった。安全を真っすぐに考えた」と答えた。

 玄海原発の30キロ圏で佐賀、長崎、福岡の3県にまたがる8市町。伊万里市をはじめ半数の4市が反対している。市町数を単純に見れば、賛否は真っ二つ。知事は「(反対は)自然なことだ。非常に悩み、耳を傾ける必要があると思った」としつつ、容認した県議会や「皮膚感覚」のもと、同意の判断を下した。

 福島第1原発事故後、原子力災害の避難計画が、原発の半径10キロ圏から30キロ圏に拡大された。一方で、再稼働の「同意権」の位置付けは法的に曖昧なまま。川内原発(鹿児島県)などの先行事例と同様、立地県の佐賀県と立地自治体の玄海町の同意のみをもって地元手続きは終了した。

 ◆国を批判

 「国は事故時の避難計画の策定を義務付けておきながら、同意権を法制化していないのは全く理にかなっていない。逃げている」。知事の同意後、会見した伊万里市の塚部芳和市長は批判の矛先を国に向けた。

 山口知事も、法令に規定のない「地元同意」や手続きの不透明さに不満を持っていた。「一連のプロセスを進める中で、手続きのありようが非常に分かりにくいと感じるところがあった」。22日、世耕弘成経済産業相との会談でも、国で議論して明確なルールを作るよう直接訴えた。

 それでも国は立地地域ごとに事情が違うとして、真剣に向き合おうとはしていない。世耕経産相は「一律に法律で縛るよりも地域の状況に応じて対応した方がいい」とかわす。

 塚部市長の不満は収まらない。「避難計画と同じように30キロ圏にすれば分かりやすいのに。再稼働をスムーズに進めたい本音が見え見えだ」

 「事故のリスクはみんな同じなのに一部の人だけで決めていいのか」-。30キロ圏内の周辺住民は「蚊帳の外」に置かれた違和感は根強い。8市町の30キロ圏人口は26万人を超え、うち玄海町は5800人と2%程度。一方で反対する伊万里、松浦、平戸、壱岐の4市は計10万人を超える。

 ◆漂う無力感

 松浦市の友広郁洋市長は今月上旬、再稼働反対を表明した会見で「大方の市民は原発の安全性について不安を感じている。議員や市民からも再稼働に賛成する意見は耳に入っていない」と「民意」を強調した。地元の元漁師(74)も「みんなが反対なのに立ち止まりさえもしない。佐賀県に選挙権を持たない私たちの声はどうすれば伝わるのか」と憤る。

 首長や議会が意思を表明しても、曖昧な同意権の前では無力感が漂う。福島の事故を経ても、周辺の民意は置き去りにされたまま、再稼働の準備は進んでいく。

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