「やっと」という感がぬぐえないが、被害者の心情をくんだ一歩といえるのではないか。性犯罪を厳罰化する改正刑法が成立し、公布された。来月13日に施行される。明治40(1907)年の刑法制定以来の大改革になる。

 改正法は強姦罪の名称を「強制性交等罪」に変更し、女性に限定されていた被害者に男性も含め、性交類似行為も対象にした。法定刑の下限を懲役3年から5年に引き上げたのは、「強姦が強盗よりも刑が軽いのはおかしい」という批判が強かったからである。

 「魂の殺人」と呼ばれる強姦は、被害者に立ち直れないほどの精神的苦痛と苦悩をもたらす。人権を尊重した、性差別のない法改正は、長年の課題だった。

 今回の柱の一つは、これまで強姦罪などで加害者を起訴するのに、被害者の告訴が必要だった「親告罪」規定を削除したことである。これまでは警察が立件するかどうかを被害者が選ばねばならなかった。被害者の名誉やプライバシーを守るためなどが理由だ。被害者にすれば葛藤は大きく、親告罪規定が泣き寝入りを強いてきたとされている。

 内閣府の調査(2015年)で「無理やり性交された」という女性117人に対応を聞いたところ、「警察に連絡・相談した」人は4・3%に対し、67・5%の人は「誰にも相談しなかった」と答えた。多くが屈辱感や恐怖心を抱え込んでいるとみられる。

 ただ、いろんな事情で起訴を望まない被害者もいるとみられ、そうした意思も尊重されるべきだろう。

 今後の課題も残された。強姦罪の成立要件の「暴行・脅迫を用いる」という規定が緩和されなかった。暴行や脅迫がなくても「恐怖で体が凍り付いたり、頭が真っ白になったりして抵抗できないケースは多い」と被害者団体は緩和を訴えていた。

 暴行や脅迫の要件をなくせば、不同意の性行為だったことの立証が難しくなるとの理由で見送られたようだ。

 その上で、家庭内の性的虐待を念頭に、父母などが立場を利用して18歳未満の子どもに性的な行為をした場合に限り、暴行や脅迫がなくても処罰できるようにした。

 心身ともに傷ついた被害者を支える取り組みの強化も求められる。「性被害ワンストップ支援センター」の整備が進み、現在、全国に39カ所がある。

 その一つ、県医療センター好生館内の「性暴力救援センター・さが(さがmirai)」は、全国で4番目にできた組織。佐賀県の取りかかりは早く、被害者に寄り添う体制をとっている。医療面では、性感染症の検査や緊急避妊薬の処方などを行い、アバンセ(佐賀市)の女性総合相談でも、悩みや相談に電話で応じている。

 被害者のケアとは、日常生活など失ったものを取り戻すこと。加害者が逮捕されて「やっと区切りがついた」という人もいる。被害者が回復するきっかけの一つに逮捕がなるとすれば、今回の法改正は必要なものだった。

 加害者へのアプローチも欠かせない。性に対する考え方や人間観がゆがんでいる場合が多いといわれ、刑務所での矯正プログラムや、発達段階に応じた人権教育なども充実させたい。(横尾章)

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