旅とともにある彼のギター

 できるだけ毎朝散歩をする。取り囲む山々にまぶしく当たる光の中で、何も考えずにただ歩く。渓流のとどろきが低く聞こえ、鳥のさえずりと木々のざわめきと共に水路それぞれに流れの音がある。序章から始まって、同じ音の道はない。一つの散歩が一つの音楽のようだ。

 若い旅人が我が家に滞在している。60キロの荷を積んで1年以上自転車で日本を走っている。高校を出て東京の音楽学校に進んだが、どうしたら売れるかばかりの授業と人々にこのままでは自分が壊されてしまうと飛び出した。自分の本当のピアノを求めるには人々の本当の暮らしを知りたいと自転車の旅を選んだ。

 我が家では養鶏や畑の世話をしてくれている。これまで出会った人々、出来事を聞きながらの食卓はまるで一緒に旅をしているようだ。昨夜は食べながら映画を見、今宵は毎月の読書会に連れていく。課題書は『荒野へ』。佐賀の友人たちを巻き込んで、彼と共に「生きる」を語りたい。(養鶏農家・小野寺 睦)

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