田植えの準備に忙しそうな山裾の道を行くと、一面の濃い紫や白のハナショウブが圧倒的な美しさで迎えてくれた。みやき町簑原(みのばる)のハナショウブ園。

 このハナショウブ園は山下久吉さん、文枝さん夫妻が30年ほど前から、約1反(300坪)の休耕田を活用して栽培管理をしている。「今年は春の新芽の出が悪くて、株分けに苦労しました。1本の茎に三つぐらいの花が咲くので、毎日古い花をかいでやらんと、次の花がうまく咲かんとですよ」と話してくださった。この花にはうつむいた花がひとつもなく、やさしさを秘めた気高さがある。

 背景の山は鷹取山。その山の麓に風の神様を祀(まつ)った綾部神社。戦国時代や藩政時代からの歴史と豊かな自然が今も残る山里。その一隅に新たな名所の花が初夏の光に輝いている。(佐賀女子短期大学名誉教授・山田直行)

このエントリーをはてなブックマークに追加