■海上受け渡しも税関の水際対策限界

 香港などから日本に金塊を密輸し、税関での納付を免れた消費税8%分の利ざやを稼ぐ事件が相次いでいる。韓国・仁川空港を経由するルートが多く、空港内で運び役に託すなど手口も巧妙化。外国人旅行者が急増する中、捜査当局からは水際対策の限界を指摘する声も出ている。

 仁川空港の乗り継ぎエリア内にあるフードコートで見知らぬ人物から金の延べ板三つを受け取り、トイレに移動。股間に装着したサポーターや両足の裏に隠して福岡空港に密輸しようとした-。

 今年3月に福岡空港で逮捕され、その後関税法違反などの罪に問われた大阪市職員の男(54)の公判。検察側は密輸の手口を明かし、この男がパチンコ仲間から持ち掛けられ、昨年11月から4回にわたり金塊を日本に持ち込んだと主張した。

 ▽トライアングル 

 香港-韓国-日本のトライアングル。非課税の香港で金塊を買い付け、仁川空港内で運び役に託すルートを捜査関係者はこう呼び警戒を強める。今月中も韓国から中部空港や成田空港に入った運び役とみられる男女が摘発された。

 なぜ仁川空港を経由するのか。税関関係者は香港と日本への便数が多いことに加え「短期間で日本と香港を行き来すれば不自然さが一目瞭然で、それを隠すためでは」と分析する。密輸事情に詳しい商社関係者によると、シンガポールで買い付けるルートも出てきているという。

 ▽中国マフィア 

 海上で金塊を受け取り日本に持ち込むケースも。唐津市の港に金塊約206キロを密輸したとして中国人を含む9人が今月逮捕、起訴された事件では、主犯格とみられる男(66)と暴力団関係者が交際していたとの情報があり、捜査関係者は「中国マフィアと結託した組織的な事件の可能性はある」と話す。

 日本の税関では航空会社の協力を得て、不自然な渡航歴などがある人物を事前に把握し、金属探知機を使った検査を実施。2015年7月~昨年6月の摘発件数は294件に上った。

 ▽「追い付かぬ」 

 しかし、外国人旅行者の急増もあり、昨年の入国者数は4047万人と06年の約1・5倍に。一方、税関職員は同じ期間で約6%しか増えず、税関関係者は「円滑な手続きとの兼ね合いもあり、検査が追い付かないのが実態だ」と漏らす。

 密輸が発覚しても行政処分であれば罰金納付で金塊が戻る制度になっており、税関関係者からは原則没収とするなど規制強化を求める声が上がっている。捜査幹部の一人は日本の貴金属業者が買い取った金塊を輸出する際に消費税が還付される仕組みに着目し「密輸品でないことを示す納税証明書を提出しないと還付を受けられない制度をつくるべきだ」と提案する。【共同】

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