介護家族のストレス軽減

介護家族のストレス軽減

 認知症の人の尊厳を大切にするフランス生まれのコミュニケーション技術が、介護者のストレス軽減にも効果があるとして、注目を集めている。介護する家族だけでなく、施設職員の職場の人間関係改善に役立つといった声も。対人関係の「技術」として身に付けられるだけに、応用範囲は広そうだ。

 「ユマニチュード」と呼ばれるこの手法は、2012年ごろから日本でも導入され始めた。「視線を合わせ続ける」「穏やかに話し掛ける」「腕や足をつかまない」などを組み合わせ、認知症の人と信頼関係を築くのが特徴。寝たきりを防ぐため、立つ機会を増やす支援をする介護のプロ向けに開発されたが、介護者の負担軽減にもなるといった指摘があった。

 そこで、東京医療センターの本田美和子医師らが、16年度に福岡市で認知症高齢者を自宅で介護する148人を対象に調査。2時間の研修後も習った内容を実践できるよう「部屋に入る時はノックして知らせる」といった具体的な助言を書いたはがきを約3カ月、毎週送った。

 その上で研修前と後の数値化した介護負担感の変化を調べると、ストレスが改善。介護される側の暴言や徘徊も減った。

 参加した下島康則さん(72)は妻(66)に優しく話し続けながら、わずかな反応にも気を付けていると、身を委ねてくれるようになった。「私もうれしいし、気持ちが軽くなった」

 認知症の義母を介護する福祉団体職員の山本誠さん(49)も効果を実感する一人。毎朝、玄関で義母の手を握り、目を見ながら「お留守番をお願いしますね」と笑顔で声を掛けた。すると義母は落ち着き、言い争いが多かった家族の会話が穏やかになった。

 一方、病院や介護施設の職員からも「自身の行動や周囲との関係が変わった」などの声が上がる。

 ユマニチュードのインストラクターを務める看護師、石川咲希さん(28)は、以前は人付き合いが苦手だったが、いつの間にか同僚とおしゃべりを楽しむようになり、仕事もやりやすくなった。「技術として身に付いたので、無理なく自分を変えられた」と実感する。

 横浜市の特別養護老人ホーム「緑の郷」ではケアを嫌がる90代の男性に半年間、ユマニチュードを取り入れたところ、職員が自主的に利用者のレクリエーションや歩行練習に取り組むことが増えた。担当者は「入所者と向き合おうとすることで、モチベーションが上がったのでは」と分析する。

 職場の人間関係に詳しい社会保険労務士で「メンタルサポートろうむ」(宇都宮市)代表の李怜香さんは「ユマニチュードは相手の人格を尊重することが基本なので、どんな職場でも役立つ」と指摘する。「『触れる』のはセクハラと取られる恐れがあるため勧められないが『見る』『話す』技法は、互いが前向きな言動に変わるきっかけになる。パワハラ対策としても有効です」

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