ふるさと納税の返礼品に採用されている「天衝米」を箱詰めする米多浮立保存会の松田幹雄会長=上峰町中央公園

■返礼品や使途、課題も

 全国有数のふるさと納税寄付額を誇り、長年の懸案だった財政健全化が進む上峰町。住民サービス拡充に踏み出す基盤が整う中、何が求められているのか。7日告示、12日投開票の町長選を前に、9600人が暮らす町の課題を探る。

 上峰町中央公園の一角にある管理棟。県重要無形民俗文化財「米多(めた)浮立」保存会員らが、返礼品のコメを袋に入れ化粧箱に詰めている。昨年度は300セットの申し込みがあり、約100万円の収入があった。本年度も同程度を見込む。保存会の松田幹雄会長は「以前町から受けていた補助金も必要なくなった。良い仕組みを作ってくれた」と“恩恵”を喜んでいる。

 上峰町のふるさと納税は2013年度が2件20万5千円、14年度が3件40万円。15年度も8月末までは1件30万円と振るわなかった。しかし同9月から返礼品を拡充し、仲介サイト「ふるさとチョイス」に登録すると、9月~翌年3月までで約21億3千万円と急成長。16年度は1月末までに25万4902件、42億9498万円が寄せられている。

 町は長らく財政難に苦しみ、10年度には単年度赤字に陥る寸前だった。他自治体に比べ住民サービスを抑制し、新規事業は国などの補助を活用してきた。14年には県内初の財政健全化条例を作り、起債額(借り入れ)が同年の償還金(返済)を超えてはならない規定も設けた。そこにふるさと納税という「追い風」が吹いた。

 自主財源比率は15年度当初の49・8%から、17年度は81・6%と急伸した。自治体の収入に対する借入金返済額の割合を示す実質公債費比率も15年度決算で15・4%と、ピークだった08年の23・3%から7・9ポイント改善した。

 一方で、人口1万人足らずの小さな町ゆえに、返礼品に町内産以外の物を使わざるを得ないという課題もある。ある米農家の60代男性は「せっかくのふるさと納税なのだから、返礼品にも町内産をもっと使ってほしい」と漏らす。

 町も経済効果を波及させようと試みている。企業や団体の新規参入・意欲向上を狙い、返礼品に出品するための商品開発にかかる初期投資を町で賄う。国の交付金を活用した「儲(もう)かる農の上峰塾」では、農業の効率化や商品開発に取り組み、出来上がった商品は2月下旬、都内の高級スーパーで披露した。

 寄付金は使用目的を定め、上峰町の場合は(1)ひとづくり(2)まちづくり(3)しごとづくり(4)町長おまかせ-の四つ。15年12月に発覚した給食異物混入問題で業者委託を取りやめ、ふるさと納税を財源に約1億円をかけて旧町給食センターを改修。16年4月に自校式の給食を再開させた。小学校でのオンライン英会話にも全国の善意を充てている。

 ふるさと納税の勢いは止まらないが、昨年12月議会では議員が財政改善を理由に費用弁償復活の議案を提出。その後、「ふるさと納税が使われるのでは」と危惧する声が全国の寄付者から相次ぎ、結局撤回された。町の台所を潤す寄付は注目度も高く、使途の透明性が一層求められている。

=2017上峰町長選=

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