人工呼吸器や酸素ボンベなどを車いすに積み、特別支援学校に通学する山本歩夢君と母親の可奈子さん=佐賀市内

■個別ケア信頼関係が鍵

 山口祥義知事は任期折り返しを迎え、2017年度当初予算案は1期目の仕上げに向けた布石といえる施策や事業が盛り込まれた。福祉・医療分野や明治維新150年事業など重点配分した施策の狙いと内容について、現場の声を交えて点検する。

 スクールバスの運行が想定される幹線道路までは、歩いて10分ほどかかる。雨が降れば、車いすを押しながら傘も差さなければならない。子どもの体調に合わせて毎日決まった時間までに準備を済ませ、バス停で待つことができるのか。

 医療的ケアが必要な柚葉さん(12)を車で片道30分かけて、県内の特別支援学校に送り届けている佐賀市の岩瀬妙子さん(40)はバス運行を歓迎しつつ、不安も抱いている。「もし大型バスが回るだけになれば利用できるかどうか…」

 山口知事が「今回の予算の目玉」として打ち出した「人の想いに寄り添う事業」。メニューの一番に挙げたのが特別支援学校のスクールバス導入だ。事業費8384万円を計上し、6月から県内6校で各1ルートを予定している。

 特別支援学校には寄宿舎があるものの、遠方からの子ども向けが現実で、定員も限られる。医療的ケアが必要だったり、多動傾向があったりすれば難しい。保護者が送迎する県内約550人のうち6割近くが片道30分以上かかっている。通学支援は、以前から県議会でも請願が採択され、切実な要望だった。

 ただ、親たちの心配は尽きない。車いすは乗るのか、車内に不測の事態に対応できる人はいるか、時間の融通は利くのか…。県外には少人数や個別対応で通学を支援するケースもあり、岩瀬さんは「一人一人に寄り添った対応になればうれしい」と期待する。

 県は病気や障害のある児童への一時的なケアを代行することで、家族の休息を促す「レスパイト」環境の充実も掲げる。その一つとして、慢性の重病がある児童の家庭に、医療保険と別枠で訪問看護師を派遣する。事業費は1198万円。

 脊髄性筋萎縮症の歩夢君(9)を介護する佐賀市の山本可奈子さん(37)は、普段から約1時間の訪問看護を利用するが「美容室にも行けない」のが実情だ。県は「時間を延長したり回数を増やしたりできる」と説明するが、常に薬や体調の確認があり、山本さんは「信頼できる看護師でなければ簡単に離れることはできない」と気をもむ。

 福祉や医療の第一線で活躍する関係者の懇談会も設ける。現場の声を事業に反映させる狙いだが、限られた予算の中でどれだけ具体化していくかは、「やりながら考えていくしかない」(県幹部)。

 特別支援学校に通う歩夢君は人工呼吸器を常時使い、個別対応でなければスクールバスは利用できない。「訪問看護に来てくれる人が、そのまま学校でもケアしてくれる体制が理想」と山本さん。利用者のこまやかな希望にも寄り添うことができるのかどうか。信頼関係がその鍵を握る。

=点検2017予算=

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