傍聴席から再稼働同意の表明に対して抗議する市民団体=25日午後、佐賀県議会

■政治動かすほど広がらず

 直談判しかなかった。山口祥義佐賀県知事が玄海原発3、4号機(東松浦郡玄海町)の再稼働同意を表明した24日の会見終了直後、会場そばの知事室前に反原発団体の約10人が詰め掛けた。「5分でいいから会わせて」「われわれは県民ではないのか」。入り口をふさぐ職員と1時間以上押し問答したが、知事室の扉は閉ざされたままだった。

◆ポーズ

 1月18日、国の審査に合格し、再稼働へ向けた地元同意手続きが本格化した。複数の市民団体は同意権の考え方や安定ヨウ素剤の配布など8回にわたり質問書を県に提出した。だが、同意表明前も、そして今も、県からの回答はない。

 市民団体側は知事への面会も求めたが、窓口の職員から「要望は伝えるが確約できない」と突き返された。団体の1人は「知事の『プロセスを大事にする』はポーズだけ。反対の意見は切り捨てている」と怒りをぶつけた。

 4月に入ると、県議会決議、担当大臣や九電社長との会談と一連の“セレモニー”が淡々と進んだ。再稼働に反対する県内外の市民団体は連日、県庁で要請書を提出したが、担当職員は「いろんな意見を踏まえて知事が判断します」の一点張り。要請の受け取りさえも形式的に映った。

 「福島の状況は県民も知るところ。原発に大きな不安や疑問を持たれるのはむしろ当然」。「私が先頭に立って再生エネルギーへの取り組みを加速させる」。山口知事は会見で反対意見に配慮してみせたが、県庁内のテレビで見ていた団体関係者は「しらじらしい」と吐き捨てた。

 佐賀新聞が昨年秋に行った県民世論調査で、玄海原発の再稼働に反対する回答は5割を占め、賛成の約4割を上回った。福島第1原発事故を受けての住民の不安は根強く、県が設置した各界代表者で構成する委員会でも安全性や暮らし、農業などへの不安を代弁する意見が上がった。

◆議会の「民意」

 市民団体がいくら声を張り上げても、容認派が多い議会の「民意」に阻まれてきた。代表の石丸初美さん(65)は「反対運動も疲れ切っている。ただ安全に暮らしたいだけなのに」と嘆く。佐賀大の吉岡剛彦教授(法哲学)は「原発事故以来、国会デモなど若者や主婦らこれまで市民運動に参加しなかった人たちが加わったが、政治を動かしうるだけの裾野の広がりには至っていない」と指摘する。

 それでも28日夕、毎週金曜に行う県庁付近での街頭活動にメンバーは立った。2012年7月から続けて248回目。杉野ちせ子さん(65)は「安全性は確認されていないし、住民の理解も進んでいない。再稼働を止めるまで訴えていく」と語気を強めた。

 「県民の安全を何よりも大切に、原発に真摯(しんし)に向き合い続けていく」。山口知事が同意表明で掲げた誓い。不安や不信を拭う実行力を示せるか、これまで以上に厳しい視線が注がれる。=おわり

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