この残暑の厳しさに、つい、かき氷に手がのびた人も多かろう。わが家でも、しまっていたかき氷器がひょっこり出てきて大活躍している◆清少納言の「枕草子」に気品の高いものとして、かき氷が登場する。「削(けづ)り氷(ひ)にあまづら入れて、新しき金鋺(かなまり)に入れたる」。削った氷に甘葛(あまずら)をかけ、新しい金物の椀(わん)に入れた時の印象がいいという。甘葛は蔓草(つるくさ)からとった甘味料。平安の頃は冬に切り出した氷を氷室(ひむろ)に保存して使ったから、一握りの上流階級のぜいたく品だった◆庶民の味になるのはずっとあと。中川嘉兵衛という人が明治の初め、北海道函館の五稜郭(ごりょうかく)でとれた天然氷を、京浜地区まで運ぶことに成功する。削り氷が登場するのは明治20年代である。昭和9年生まれの作家、井上ひさしは少年時代、自宅前にあった酒屋の主人から時々氷のかけらをもらった。「?張るときのあの贅沢(ぜいたく)な冷たさはいまも忘れられぬ」と随筆に書いている◆さて、いまやかき氷の進化が止まらない。都会では、見た目はまるで洋菓子のようなものや、お酒をシロップ代わりにした大人の味わいのもの、台湾や韓国から上陸した変わりダネも現れた◆大震災以降、節電で昔ながらの涼をとる方法としてブームになったらしい。かき氷が食べたくなる気温は30度以上とされる。まだまだお世話になるんでしょうね。(章)

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