この原稿を書いている論説委員会の部屋では、訪ねてきた人が突然、「あっ」と立ち上がることがある。壁の時計に目をやり「しまった、次の予定があったのに」と。居心地が良すぎて長居してしまうわけではない。時計を15分も進めているからだ◆誰がいつから始めたかは知らないが、締め切り優先の新聞社だけに、時間に追われた先輩記者が編み出した知恵に違いない。ただ、15分はさすがに進めすぎではと思っていたら、上には上がいて…◆サッカー日本代表主将の長谷部誠選手が著書『心を整える』(幻冬舎)で、少年時代から集合時間の1時間前に着くと明かしている。狭い部室でも、1人なら広々と使える。長椅子に練習着とスパイクを並べ、ゆっくりとストレッチ。「ひとりだけの贅沢(ぜいたく)な時間。僕にはこういう自分なりの心と身体を準備する時間が必要なのだ」と◆遅刻もしない。遅刻は周囲の人々の時間を奪い、組織の士気に影響する。「時間に遅れるのはどこかに甘さがあり、本気で取り組んでいないという証拠だ。きつい言い方をすれば、まわりに対する尊敬の念が薄いと思われても仕方ない」◆新生活がスタートして1カ月。そろそろ疲れがたまって、時間にルーズになりがちな新人もいるだろう。「遅刻が努力を無駄にする」。長谷部選手の言葉を胸に刻んでおこう。(史)

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