のびのびとした筆致で野に咲く花や田園風景にある身近な題材を好んで描く「けいこう窯」の岡部美智子さん=西松浦郡有田町

一気呵成(かせい)に筆を走らせて生命の躍動感を表現する岡部美智子さん=西松浦郡有田町のけいこう窯

■生命の躍動、一気に

 伸び伸びとした奔放な筆致と呉須の濃淡で生命の躍動感を表現する。染付の技法で描かれる文様は、伝統様式よりも、イヌフグリやホトケノザなど野に咲く花や近所の畑の麦、台所にあったキャベツと、身近なものを好んで描く。「身の丈が一番。人に踏まれたりしてもその場で立派に咲く花はきれいですね」。自然体の生き方がそのまま作風となっている。

 岡部さんは高校卒業後に大阪で就職し、雑誌やポスターのデザインを手がけた後に一度帰郷して母校の助手として勤務。だが、1968年に同級生の夫と結婚して再び大阪で暮らすことになり、出産と同時に専業主婦に転じた。

 35歳。当時の感覚では決して若くなかったが、娘の幼稚園入園と同時に通い始めた陶芸教室で創作意欲に火がついて、焼き物の作家を目指すことにした。夫・景光さん(72)が後押しをしてくれる形で帰郷。県窯業試験場の研修生として学んだ。

 恩師の紹介で窯元を手伝っていた頃、作品を目にした商社の社長の仲介で婦人雑誌に写真が掲載され、横浜での個展の話が舞い込んだ。公募展でも高い評価を受けるようにもなり、86年に42歳で独立。理解を示してくれた夫への敬意も込めて名前を音読みした「けいこう窯」とした。

 作品の力を支えるのはデッサン力。普段から題材になりそうな草花や生き物を見つけると画用紙に書き留め、筆の運びは新聞紙に何度も試し書きして体にたたき込んだ。いざ絵筆を持つと、「気持ちにブレが出ないように」と一気呵成(かせい)に書き上げる。

 大胆さの中に緻密さもにじむ。古染付や初期伊万里の風格を理想に挙げ、「ふんわり柔らかいものがいい」という岡部さん。還元反応で「温かみのある青」を表現するために釉薬の調合や炎の色と引き上げる頃合いを研究。けんしょう炎を患うまでは自らろくろも引いた。

 還暦を前にふと恩師の言葉を思い出し、伝統工芸士の試験を受けることにしたが、何度も不合格に。「これで最後」と決めて臨んだ2014年にようやく認定された。「意志の力は本当に強い。気力と体力が続く限り、公募展にも挑戦したい」。遅咲きの花の季節はこれからだ。

 おかべ・みちこ 1944年、有田町生まれ。有田工高卒。県窯業試験場研修生を経て80年、有田町南山にけいこう窯を開く。2014年に伝統工芸士(下絵付)に認定。電話0955(43)3772。

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