開いた口がふさがらない。

 稲田朋美防衛相が、東京都議選の自民党候補の応援演説で「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたい」と発言、撤回した。自衛隊の政治利用であり、なかったことにして済むような話ではない。

 背景には、安倍晋三首相の友人が理事長を務める岡山市の学校法人「加計(かけ)学園」の問題で明らかになった、行政の中立性を軽んじ、自分たちに都合よく動かそうとする安倍内閣の姿勢がある。即刻、稲田氏が自ら辞任するか、安倍首相が罷免するべきだ。

 稲田氏は発言を撤回した際の記者会見で「自衛隊の活動自体が、地域の皆さま方の理解なくして成り立たないということについて、感謝していると申し上げたかった」と説明したが、意味不明である。

 さらに「誤解を受けかねない」とも釈明したが、問題の発言は簡潔かつ明快で誤解の余地はない。仮に自衛隊の政治利用が真意でないならば、なぜ撤回するのか。東京都議選を控えていることから世論の批判をかわそうとしているだけだろう。

 稲田氏に勝手に名前を持ち出された自衛隊員もたまったものではない。

 安倍首相は憲法9条に自衛隊を明記するとの改憲案について「24時間365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く任務を果たしている自衛隊に対し、国民の信頼は9割を超えている。私たちの世代のうちに、自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置付け、違憲かもしれないとの議論が生まれる余地をなくすべきだ」と述べている。

 自衛隊に国民が厚い信頼を寄せているのは事実だ。そんな大切な存在を選挙に利用し、不用意な発言をした揚げ句、軽々しく撤回するような人物が防衛相にふさわしいと安倍首相は考えているのだろうか。

 稲田氏は3月にも国有地を格安で取得した大阪市の学校法人「森友学園」の訴訟に「関与していない」と答弁、その後、撤回、謝罪している。

 さらに派遣されていた自衛隊部隊が「戦闘」と記していた南スーダン情勢について「事実としての殺傷行為はあったが、憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」と答弁したことがある。

 自衛隊の安全よりも法的な整合性を優先しての発言である。防衛相どころか閣僚としての資質を欠いているのは明白だ。

 自衛隊の士気を維持するためにも稲田氏が防衛省のトップを務め続けることは避けるべきだ。

 しかし、驚くべきことに安倍首相は稲田氏に職務継続を命じたという。今後、安倍首相は任命した責任とともに問題が生じているにもかかわらず続投させた責任も問われることになる。

 その安倍首相自身、「加計学園」問題に絡んで国家戦略特区制度を活用した獣医学部新設を今後、全国的に広げていく意欲を表明した。

 「加計学園ありき」との批判をかわす狙いからだが、自分が抱える問題のために行政の在り方を変えてしまおうとするのも政治利用と言わざるを得ない。

 このところ内閣支持率が急落し、東京都議選でも自民党は苦戦を強いられている。内閣が内包する問題を国民が見抜いていることを安倍首相は肝に銘ずるべきである。(共同通信・柿崎明二)

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