「大崎事件」で再審開始を認める決定が出され、鹿児島地裁前で垂れ幕を掲げる弁護士ら=28日午後

■捜査機関、親族らの自白誘導か

 鹿児島県大崎町で1979年、農業中村邦夫さん=当時(42)=の遺体が見つかった「大崎事件」で殺人罪などに問われ、服役した義姉の原口アヤ子さん(90)が裁判のやり直しを求めた第3次再審請求に対し、鹿児島地裁は28日、再審開始を認める決定をした。

 有罪認定の決め手となった親族らの「自白」について、捜査機関による誘導の可能性を指摘し「原口さんの関与を裏付ける客観的証拠はなく、殺害行為がなかった疑いが否定できない」と判断した。

 「共犯者」とされた原口さんの元夫(故人)と親族2人は80年の一審判決で実刑とされ、控訴せずに確定。長女が起こした元夫の再審請求に対しても地裁はこの日、認めた。

 原口さんの再審開始決定は、1次請求時の2002年の鹿児島地裁決定に続き2度目。弁護団によると、同様のケースは83年に再審無罪となった免田事件の例がある。

 確定判決によると、原口さんは中村さんの日頃の生活態度に不満を募らせ、元夫や親族2人と共謀。79年10月、中村さん宅で首をタオルで絞めて殺害し、牛小屋に遺体を遺棄した、とされた。

 原口さんは当初から全面否認し、犯行と結び付ける直接証拠は3人の自白に絞られていた。

 決定で冨田敦史裁判長は、弁護団が提出した心理学者の鑑定書を重視し、親族らの自白は「殺害行為など根幹部分に説明のつかない変遷がある。親族らは知的能力に問題があり、捜査機関の誘導や迎合によって変遷した疑いがある」とし、信用性を否定した。

 確定判決は死因を「窒息死」としたが、決定は「積極的に認定する証拠はない」とした。

 心理鑑定は「親族らの供述は体験に基づかない」とする内容だった。弁護団は、この他に遺体の解剖写真に基づく法医学者の鑑定書を提出。窒息死の所見が見られず、殺害方法が親族らの供述と矛盾すると主張していた。

 原口さんは懲役10年が確定し、刑期満了で90年に出所。95年に最初の再審請求をした。再審開始を認めた02年の地裁決定は、福岡高裁宮崎支部が04年に取り消し、その後の2次請求も退けられた。【共同】

■大崎事件

 鹿児島県大崎町で1979年10月、農業中村邦夫さん=当時(42)=が自宅横の牛小屋から遺体で見つかった。鹿児島地裁は80年、絞殺と認定し、殺人罪などで義姉原口アヤ子さんら3人に、死体遺棄罪で中村さんのおいにそれぞれ実刑判決を言い渡した。原口さんは無罪を主張したが、最高裁で懲役10年が確定。服役後の95年に再審請求し、鹿児島地裁は2002年、再審開始を決定した。だが福岡高裁宮崎支部が04年に取り消し、最高裁で確定した。2回目の請求も退けられ、15年7月に3回目の再審請求をした。

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