党利党略が過ぎる―。最近の安倍政権の行状と日本政界の現状を見ると誰もがそう思うのではないか。

 安倍晋三首相が今月28日召集の臨時国会の早い段階で衆院を解散、10月下旬に総選挙を行う意向だという。

 学校法人「森友学園」や「加計(かけ)学園」の真相解明のため野党が憲法に基づいて求めてきた臨時国会召集を約3カ月も拒み続け、さらに北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射を強行する緊張下での重大判断だ。

 安倍首相は表向きには意向を明らかにしていないが、背景には野田聖子総務相らを迎えた内閣改造で森友・加計問題で続落した内閣支持率が上向く一方、野党第1党の民進党で離党が続くなど混乱が収まらないという与党にとって有利な状況がある。

 さらに世論の支持を集める小池百合子東京都知事の側近が年内立ち上げを進める国政政党の態勢が整わないうちに済ませたいとの思惑もあるかもしれない。

 2014年、準備不足だった当時の民主党の虚を突いた形の電撃的な解散で安倍首相は大勝を収めている。解散に踏み切れば、何らかの「大義」を掲げることになるだろうが、成功体験が基になっているのは間違いない。

 安倍首相は、「10月10日公示、22日投開票」「同17日公示、29日投開票」の2案を念頭に置いているもようだ。18日から22日までの訪米から帰国した後に北朝鮮情勢などを見て、最終判断する。

 10月22日の衆院3補欠選挙を経て「11月解散―12月総選挙」も視野に入れるが、与野党は最短日程を前提に選挙準備に入っている。

 安倍政権は、6月中旬までの通常国会で、森友・加計両学園を巡る問題で追い詰められると、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法に関して、参院法務委員会の採決を省略する「中間報告」と呼ばれる禁じ手を用いて本会議採決を強行、会期末に閉幕させた。

 その後、新たな事実や疑惑が出てきても臨時国会召集要求には外交や法案準備などを理由に応じなかった。今月の臨時国会の早い段階で解散した場合、森友・加計問題は真相解明からほど遠い状態で国民の審判を受けることになる。

 自民党の憲法改正草案は、国会召集要求を「少数者の権利」として「要求から20日以内に召集」と明記している。自らの主張さえも棚に上げており、都合の悪い問題からの逃げ、真実の隠蔽(いんぺい)と言っても過言ではない。

 他方、民進党は相次ぐ離党者やスキャンダルによる幹事長人事撤回など前原誠司代表の体制になっても迷走が収束しない。また、小池都知事が支援する若狭勝衆院議員が早急に国政政党の旗揚げにこぎ着けることができたとしても選挙準備は極めて不十分で選挙戦を迎えることになる。

 そもそも、このような党利党略が許されるのは首相の解散権が「完全自由」と見なされているからだ。今年3月の衆院憲法審査会では、解散権に何らかの制限を設けるべきだと民進党が問題提起、国会でも議論が始まっている。

 断行されれば、そんな中での解散となる。われわれ、有権者こそが、その是非を根本から問い直さなければならない。(共同通信・柿崎明二)

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