ほこりと血にまみれた子どもの姿が世界に衝撃を与えた。5歳のオムラン・ダクニシュ君。シリアの空爆で自宅から家族とともに救い出される映像が流れた。カメラの前に座る男児は泣くでもおびえるでもなく、ただ呆然(ぼうぜん)としていた。その表情に誰もが悲しみを感じたと思う◆シリア内戦は周辺の武装勢力を巻き込み、終わる気配はない。米国やロシアも残虐なテロを繰り返す過激派組織「イスラム国(IS)」を一掃するためとして空爆を続ける。欧州への難民が増えているが、故郷が荒れ果て逃げるしかないということだろう◆この内戦に遠隔操作できる無人攻撃機が投入されている。先日も米国はISの指導者の一人を無人機で殺害したと発表した。成果は宣伝するが、この攻撃に至るまでにどれだけの市民が犠牲になったか明らかになることはない◆攻撃する側にも人命を奪うことに良心の呵責(かしゃく)はある。一部の軍事企業はそれすらなくそうと、人工知能が攻撃を判断する研究を進めている。人は戦争を機械任せにする時代が来るのだろうか。心の痛みがなくなれば、戦争の歯止めがなくなりそうで怖い◆とはいえ、戦争を始めたのは機械ではなく人間で、やめることもできないでいる。子どもたちの悲しみを識別する人工知能が戦争をやめる、そんな善意の科学を待つしかないのだろうか。(日)

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