兵庫県宝塚市役所に避難し、受付に並ぶ福井県高浜町の住民=27日午後

 関西電力高浜原発(福井県高浜町)の広域避難訓練は、地震と原発事故が連動する複合災害を想定して実施された。原発事故の避難計画は一部の住民に一時的に屋内にとどまるよう求める。だが家屋に甚大な被害が出た熊本地震クラスの揺れに見舞われれば「屋内退避」は困難になる。専門家は「自然災害への想定が甘い」と計画の実効性を疑問視する。

 山林と崖に挟まれた高浜町の県道。倒木で道路がふさがれたとの想定で、陸上自衛官が重機で撤去する訓練に当たった。鯖江駐屯地の橋本一郎陸曹長は「道路が寸断される状況も考えられる。迅速に動ける態勢を整えたい」と気を引き締めた。

 国の原子力災害対策指針では重大事故時、原発5キロ圏の住民は即時避難する。5~30キロ圏は原則屋内に退避し、放射線量が上がれば避難する「段階避難」を前提とする。

 ■在り方明確に

 しかし震度7を2回観測した4月の熊本地震では、16万棟以上が損壊。大規模災害時に活用する緊急輸送道路も打撃を受け、余震を恐れて車中生活を続ける人も多かった。

 内閣府は5月、自宅での避難が難しい場合、近隣の避難所に退避させることを周知する文書を関係自治体に送付した。だが福井県の担当者は「熊本では住宅だけでなく、指定避難所にも被害が及んだ。国は屋内退避の在り方を明確にしてほしい」と困惑する。

 高浜町では自宅に避難できないとの想定で、指定避難所に逃げる訓練も実施した。だが、参加した50代の男性会社員は「そういった訓練とは聞いていない」と戸惑いを隠せない様子だった。

 ■あらゆる可能性

 屋内退避を前提とした避難計画を巡っては、各地の首長も疑問を投げかける。7月に就任した鹿児島県の三反園訓知事は、川内原発の一時停止を九州電力に要請。専門家による委員会で、安全性や避難計画を独自に検証する考えを示す。

 高浜原発30キロ圏に含まれる滋賀県の三日月大造知事も「屋内で安全に過ごせるのか大きな課題だ」と指摘。屋内退避の期間や解除の指標を明確にするよう国に要望する方針だ。

 東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害リスク学)は「熊本地震では、自宅に戻った人が犠牲になるなど屋内退避が危険を招いたケースもある。重大事故が起きれば、段階避難が機能するとも思えない。道路の寸断や交通渋滞など、あらゆる可能性を想定した避難計画が求められる」と話す。

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