野山の若葉が映える新緑の季節。きょうは「八十八夜」である。立春から数えて88日がたち、まもなく立夏だ。<夏も近づく八十八夜…>と文部省唱歌「茶摘(ちゃつみ)」にあるように、新茶のシーズンでもある◆8年ほど前だが、この時期に基山町の茶畑で、お茶摘み体験をした。黄緑色の柔らかな新芽を摘み取り、釜で炒(い)って熱いうちにむしろの上で手もみした。手に残った香ばしい香りが、今も忘れられない。一番茶は「長寿の妙薬」と聞くが、口に広がるさっぱりとした味が格別であった◆佐賀で最大の茶の産地である嬉野。江戸時代に長崎に滞在し、オランダ商館長の江戸参府に同行したドイツ人医師、シーボルトも嬉野の茶園のすばらしさについて記述を残している。幕末の長崎から、大浦慶(1828~84年)という女傑によって嬉野茶は輸出された◆茶を飲む習慣は、先にオランダ、後に英国で流行する。オランダ史の文献に飲茶のことが最初に現れるのは1637年だ。当初は、緑茶が輸入されていたというのが意外である。それが、次第に紅茶に移っていった(角山栄著『茶の世界史』中公新書)◆先日、嬉野でも新茶の初入札会が開かれた。今年は少し芽が出るのが遅かったが、いつも以上の品質という。ぜひ新茶を急須で入れて、吹き抜ける初夏のさわやかな風を感じたいものだ。(章)

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