ふるさと納税で、自治体が受け取った寄付額と住民が寄付したことによって減税する控除額を比べて収支計算すると、赤字になる自治体が出ている。行き過ぎた返礼品設定など、寄付金獲得競争が過熱しているのも一因だが、総務省は運用改善には消極的なようだ。地方を応援する本来の趣旨に沿う制度になるよう、自治体側から改善を働きかけたい。

 総務省のまとめによると、2015年の寄付額を反映して各自治体が16年度に控除する個人住民税の総額は998億5千万円。居住している自治体から寄付先に財源が流出する格好で、前年度の5・4倍に増えている。

 控除額を都道府県別でみると、最も多いのは東京の261億6千万円で、神奈川の103億1千万円、大阪の85億9千万円が続いた。この数字を15年度の寄付受け入れ額と比べると、東京は約249億円、神奈川は約84億円の大幅な赤字となる。全体として都市部から地方に税収が移動している。

 佐賀県の状況は、寄付受け入れ額が96億6千万円、控除額が3億1千万円で93億5千万円の黒字だった。ただ、県内20市町で同様の収支計算をすると、佐賀市は5500万円、鳥栖市はの2千万円の赤字となっている。

 ふるさと納税は08年に始まった。生まれ育った土地などゆかりの自治体を応援する趣旨で、寄付額の2千円を超えた分が、国の所得税と居住する自治体の住民税から控除される。控除に加えて返礼品もあり、節税できて特産品などをもらえる“お得感”から人気を呼んだ。自治体も返礼品を豪華にするなど競争が過熱。今では「地域応援」ではなく、返礼品の良さや返礼割合の高さが注目される。高所得者ほど寄付額の上限が高いため、富裕層の節税に使われやすいという問題点も指摘されている。

 人気の広がりには自治体側も困惑している。寄付を集めないと税収減につながり、取り組まざるを得なくなっているためだ。一方、多額の寄付集めに成功した自治体の担当者でも「他の自治体が新しい戦略をとってくるので、新たな注目策を常に考えていなければならない」と気が抜けず、制度の趣旨に反する盛り上がりには疑問の声も多い。

 競争が激化した結果、返礼品に高額の家電や換金可能な金券も登場した。総務省は4月、自治体に自粛を求めたが、強制力はなく明確な基準も示されなかったので根本改善には至っていない。このままの状態で競争が続けば、制度の趣旨を逸脱した「異常状態」に拍車がかかることになる。

 制度改善に向けた総務省の動きは鈍い。知事会や市長会で論議するなど自治体側から動き出すべきではないか。寄付できる額を下げたり、返礼の割合を定めるのも一つの方法だろう。政策を提示してクラウドファンディングのように寄付が集まれば実施する手法もある。「金目当て」ではなく、本来の「地方応援」の趣旨に沿う制度設計はできるはずだ。

 ふるさと納税の寄付金を財源にする事業を始めた自治体があり、受注増に対応して生産ラインを増強する企業も出ている。運用見直しによる影響を最小限にとどめるためにも、改善を急がなければならない。(小野靖久)

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