武雄市が全小学生に貸与したタブレット端末を活用し、家庭で予習動画を見て授業に臨む武雄式の反転授業「スマイル学習」を始めて間もなく3年になる。2年前からは全中学生にも広がり、ICT教育の先進自治体として注目されている。3年を機に市としての検証が求められる。

 スマイル学習は2014年度に始まった。児童は家で5~10分程度の動画を見て予習し、授業に臨む。科目は当初は算数(小学3年以上)と理科(同4年生以上)で、15年度からは国語(2~4年)も加わった。中学生は同年度から、数学と理科で行われている。

 端末の導入費は関連機器を含め小学生(3153台)で約1億2300万円。中学生(1550台)で約9500万円。16年度には1千台を約7200万円かけて更新した。

 佐賀新聞は2月12日から5回にわたって連載企画「反転授業の現場から」を展開、スマイル学習の現状や課題を報告した。いくつかの問題点を指摘した中で、最も気になるのが授業実施率が低いことだ。

 15年度の科目別実施率は小学校算数51・7%、理科42・1%。中学校数学34・8%、理科15・1%。学校ごとにみてみると、中学校の数学で100%の学校がある一方、最低は10・5%。理科は最高でも47・2%、最低は3・5%。小学校2科目も最高は85%程度、最低は10%台だ。実施率低迷と同様、学校間格差も非常に気になる。学校によって違いが出るのは好ましいことではないだろう。

 市教委の小学校教師への調査では58%が「スマイル学習を減らしたい」と考えている。理由には「負担がかかる」(38%)、「他の方法を用いたい」(25%)などが挙がっている。現場には「予習動画の内容に改善が必要」「自分なりの授業展開があり動画を使う必然性を感じない」「動画を端末にインストールさせる作業など煩わしい」などの声がある。現場の気持ちは大切だ。何らかの対応が必要ではないか。そうしなければ実施率がさらに下がる恐れもある。

 一方、考えさせられたのが「学力との関係」だ。市教委はスマイル学習によって学力向上を目指しているが、導入後2年間の全国学力調査の小学生の算数の結果を国や県と比較しても、成績アップを明確に示す数値は見えていない。悪くなった結果もある。

 スマイル学習の利点は、児童生徒がお互いに考え、学び合う協働的学習の時間が増えることだ。テストの成績では表出しない力、簡単には測れない力が身についている可能性もある。現場の先生から「記述式の質問に答えられる子が増えた」という声も聞いた。スマイル学習の検証に携わっている大学教授は「先生の取り組む姿勢に差があるのは育てたい学力観の違いがあるからではないか」と指摘、「どんな学力を育てるのか共有することが必要」とも語っている。

 スマイル学習の検証を続ける東洋大のグループは、近く第3次検証報告をまとめる。市教委が分析、対応することになるだろうが、大切なのは現場とのコンセンサスだ。実施率が低迷する理由を丁寧に探って対応を図り、「何を育み、どんな姿を目指すか」について現場と共通認識を持つことが必要と思う。(小野靖久)

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