自衛隊新型輸送機オスプレイの配備計画がある佐賀空港周辺

■「漁場の変化、一番怖か」「国防、大義断りにくか」

 「反対の旗ば上げとらんけんて、賛成と思われても困る」。ある地権者の男性は複雑な胸の内を明かした。佐賀空港への自衛隊オスプレイ配備計画。新駐屯地の予定地に土地を持つのは、多くはノリ漁師たちだ。かつて有明海沿岸では大型公共事業が相次ぎ、漁業環境は不安定なまま。地域分断の懸念と重い選択を迫られて揺れる中、9月1日からは新たな漁期を迎える。

 「国から直接説明は聞いとらん。組合もまだ賛成とは言っとらんやろ。正直、漁師はピンときとらんと思うよ」。地権者でノリ漁師でもある60代男性は、漁業者たちの思いを代弁した。

 佐賀空港西側の土地約93ヘクタールは、佐賀市川副町の漁業者らが県有明海漁協の支所単位の組織や個人で所有し、営農会社などに貸して麦や大豆が生産されている。駐屯地の予定地は、その南川副支所の範囲に収まるのではないかと指摘され、地権者は約250人いる。

■1人440万円

 県は昨年7月、同じ支所の範囲の土地を約3ヘクタール買収し、空港の駐車場を増設した。土地評価額は1平方メートル当たり3500円で、買収額は約1億900万円。地権者1人当たりは約40万円になる。これを基に、防衛省が提示した駐屯地の広さ約33ヘクタールで試算すると、1人当たりは440万円になる。総額は11億円に上る。

 「たったそいくらいで何のでくんね」と男性。440万円は1漁期の運転資金より少ない。「1回土地代ばもらっても、その先、ノリができんごとなったら何もならん」と不安を漏らした。

 「一番怖かとは漁場の変化さ。(オスプレイ配備は)有明海にマイナスはあってもプラスは何もなかけんね」。別の50代漁業者は、工事期間中はセメントが混ざった水で海が汚れること、駐屯地造成後は雨水の淡水が多く流れ込むことを心配する。

 防衛省は、工事中も駐屯地完成後も、中和装置や調整池を設けるなどして排水対策に万全を期し、漁業被害が出れば法令に基づいて補償すると強調する。「そりゃあ今の時代、そがん言うに決まっとる。でも、もし何かあっても、漁師だけでは因果関係の立証は難しか。国は絶対、非ば認めんけんね」

■国への不信感

 頭に浮かぶのは国営諫早湾干拓事業だ。2000~01年のノリ大不作で、漁業者たちは「諫早湾の閉め切りが原因では」と立ち上がった。長い法廷闘争で10年12月、福岡高裁の開門調査を命じた判決が確定した。あれから5年半以上、国はいまだ開門していない。

 「裁判で漁師が勝っても国は動かん。防衛省も農水省も同じ国やろ。今さら誰が信用するね」。国の都合で進められる公共事業は、拭いがたい不信感として頭にこびりついている。

 予定地の地権者には現在、年間1万円ちょっとの借地料が入る。「本音では買ってもらうとはありがたかし、売りたかよ。でも、今でさえ海の体力はぎりぎり。事故とか風評被害とか、1回でも何かあってノリのされんごとなったらしまい」

 ただ、漁業者の言い分ばかりが通用するのか、不安はある。地権者250人のうち、売ったり、相続したりして、ノリ漁師ではない人も100人ほどいる。

 防衛省の説明も分からないではない。「国防とか防災とか沖縄の負担軽減とか。命に関わる大義ば言われれば断りにっかたいね」

 地権者の思いについて漁協は「『地域の意見が分かれている状況で(地権者が)国から話を聞くべきではない』との考えを聞いている。地域が混乱するのを避けたいのだろう」と推し量る。

■佐賀空港オスプレイ配備計画

 佐賀空港に陸上自衛隊の駐屯地を併設し、防衛省が導入する新型輸送機オスプレイ17機を2019年度から順次配備する計画。防衛省は14年7月、陸自目達原駐屯地(吉野ケ里町)のヘリコプター約50機の移駐などと併せ、佐賀県に受け入れを要請した。オスプレイは離島奪還作戦の担い手として佐世保市に新設される「水陸機動団」の輸送手段として運用するとしている。

=オスプレイ配備の先に=

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