目の前の証言席に向かう足取りさえおぼつかない。万引を繰り返した70代の女性被告。佐賀地裁の公判では、持病を抱え、体も思い通りに動かない老いの窮状を弱り切った声で語った。

 寝たきりで介護が必要な夫と2人暮らし。スーパーで昨秋、食品などを万引しているのが見つかった。近くに住む娘が「二度としないように監督する」と警察に誓約して在宅捜査が続いたが、2カ月後に再び万引をして逮捕された。

 蓄えがあり生活には困っていないのに、品物に手が伸びた。買い物中、店員や客がそばにいないのが分かると、持参したレジ袋に商品を入れ、そのまま店外に出ていた。「死角に入ると、別の自分が出てきて何も考えられなくなる」と被告。娘は多忙さに見舞われ、買い物への同伴など連日のようにサポートしていくことには限界があった。

 被告は保釈後、心労で起き上がれない状態が続いた。被告人質問で弁護人が懲役刑の可能性に言及すると不安をあらわにした。「刑務所での作業についていけず、他の受刑者に迷惑を掛ける」。判決は実刑だった。(判決=懲役1年6月)

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