町が運営する通学福祉バス「のらんかい」の車内。昼間の利用客はまばらだ=上峰町

■「政争」排し議論の風土を

 財政健全化のため「町民に我慢を強いてきた」住民サービス。上峰町はふるさと納税による寄付の好調さで、他市町と比べ行き届かなかった分野にもてこ入れを始めた。

 中でも高齢者ら交通弱者への対策は喫緊の課題だ。町は南北に長い地形ながら、主要幹線道路の国道34号や県道31号は東西を走る。民間の路線バスは停留所が町中心部に偏り、町内移動には不向きな現実がある。

 町は2000年から約40人乗りの通学福祉バスを役場を起点に、北回りと南回りの2路線で運行。運賃は大人100円、子ども50円と格安ながら、朝夕の通学時を除けば利用は低調だ。2台のバスも老朽化が目立つ。

 利便性を高めて利用を促そうと、町は新たに乗り合いで客の要望に応じて目的地まで運ぶ「デマンド型交通」の導入を決めた。今年10月からの運行を目指し整備を進めている。合わせてバス2台も更新する。

 ただ、タクシーを用いるデマンド型は「ドア・ツー・ドア」になる分、1回当たりの運賃が値上がりする可能性が高い。夫を亡くした後、福祉バスをよく利用する高齢の女性は「300円になるといううわさも耳にした。3倍はちょっと。稽古事の三味線も大きなバスだから気兼ねなく持っていくけど、乗り合いタクシーだと邪魔だと思われないかしら」と心配する。住民にとって利用しやすい運用ができるかが鍵となる。

 人口減少時代で町が大きな柱に据えるのが子育て支援。財政健全化の恩恵を子育て世代にも届け、定住促進へつなげる狙いだ。まずは子どもの医療費助成を「中学生まで」から「18歳まで」に引き上げた。第2弾が太良町に続く小中学校の給食費無料化で、この数年、子育て世代の町外転出が増えている現状が背景にある。

 ところが昨年12月と今年2月の定例議会で2度の「待った」がかかった。反対の議員は財政健全化が道半ばとの見解で「段階的に実施すべき」と主張した。2月議会で無料化経費を含む当初予算案が否決され、武広勇平町長は4月からの実施を断念した。3月の町長選を前に、町長派と反町長派の攻防が激化した格好だ。

 中学校に2人の娘が通う40代の女性は「多子世帯が多い町なので、すごく助かると思っていた。『習い事に行かせてあげたいけどできない』という話も聞く。それだけに残念」と肩を落とす。一方で、小中学生の孫を持つ町内の男性(69)は「全員への補助はどうか。財政悪化で町の祭りが途絶えてしまった過去がある。皆で楽しめる催しを再開させることから始めてもいいのでは」と指摘する。

 住民サービスの何を優先するのか。長年の「政争」にとらわれず、住民目線で真剣に議論する風土の醸成が待ち望まれる。

=2017上峰町長選=

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