佐賀県が毎週水曜日に福岡市に開設している移住サポートデスク。仕事、生活面それぞれでコーディネーター2人が相談に対応している=福岡市博多区の博多バスターミナル

■地の利生かし移住支援

 JR博多駅に隣接する博多バスターミナル9階の会議室。オレンジの法被を着た女性が、スーツ姿の男性に語り掛けた。「希望の職種で情報を集めてみました。どうですか」。求人の一覧を真剣な表情で見つめる50代の男性会社員は福岡市在住。出身地の佐賀市へのUターンを考えている。

 「福岡で働きながら佐賀の転職先を探すのは大変。それに客観的に適職をアドバイスしてもらえるのも助かる」。男性は、佐賀県が毎週水曜日に開設している相談窓口「さが移住サポートデスク福岡」のありがたみを語った。

 これまで県は産業人材の確保という観点でUIJターン希望者への就職支援を中心に取り組んできた。山口祥義知事の就任以降は、子育てを含む生活全般の相談対応、サポートにまで踏み込み、移住支援を重点施策に位置付ける。県庁、東京に続き、昨年11月からは福岡に相談窓口を常設化した。

 山口知事は、ことあるごとに「福岡対策」の重要性を強調する。九州最大の都市として人材を吸引し続ける福岡都市圏と隣接する距離の近さを武器に、「住むなら佐賀県に」と定住人口増を掲げる。

 「移住施策で目指すのは地域の活性化。『仕事も暮らしも佐賀』が理想だが、『仕事は福岡、暮らしは佐賀』というすみ分けもできる。これは他県では難しいだけに福岡対策は非常に重要」と県移住支援室。

 県は昨年8月にJR九州と、10月には西鉄と連携協定を結び、まちづくりや観光開発など多彩な分野で協力をうたう。福岡都市圏との交通の利便性向上なども進めて移住者誘致で他県よりもさらに優位な立場を確保する狙いもある。

 こうした布石に加え、新年度は新たな試みを進める。福岡市にある佐賀にゆかりの飲食店などと連携し、佐賀の観光や移住などに関するパンフレットやポスターを店内に設置、従業員に佐賀の食材や観光情報を来店者にPRしてもらう。「従業員が感じ取った佐賀の魅力をさりげなくPRすることで、県などよりも魅力が伝わりやすい」と担当者。非公設のアンテナショップを複数展開するイメージだ。

 人口減による「消滅可能性都市」についてまとめた「増田レポート」や政府の地方創生戦略の本格化で、2014年から全国の自治体が移住支援に本格的に動き出した。NPO法人ふるさと回帰支援センター(東京都)は「自治体の取り組みで、潜在的な移住希望者の掘り起こしが進んでいる」と地方移住の動きは加速するとみる。

 「受け入れる地域側がどんな地域を目指し、どんな人に来てほしいかという視点を持つことが必要。自治体も単なる人口減対策として取り組むと道を誤る」とセンターの担当者。地域づくりの観点から地に足のついた取り組みの重要性が問われる。

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