電気自動車(EV)普及への取り組みが世界規模で本格化してきた。自動運転技術の開発も加速している。移動という人類の基本的な要望を100年以上にわたって担ってきた車の概念が大きく変わる。飛行機などと違い、人々の近くで日常生活を支えてきた車が飛躍的な進歩を遂げ、利用方法も転換されれば、暮らし方や価値観も変わるだろう。

 スマートフォンで車を呼ぶ。自分で運転する必要がないから、車内では音楽を聴いたりして過ごす。排ガスは一切出ない。呼べば、すぐ来るので所有する必要はなく駐車場も不要。走行台数や速度などは人工知能(AI)で制御され渋滞はない。こんな未来を想像してみた。

 電動モーターを動力源とするEVの普及は裏返せば、ガソリンなどを燃料とするエンジンとの決別でもある。これを地球規模での環境改善や産業の高度化に向けた追い風にしたい。

 エンジンは機関内で燃料を燃焼し、そこで生じた力を、変速機などを通じ車輪に伝える。こうした複雑な仕組みを作動させるには約3万点の部品が必要になるため、メーカー本体に下請けの部品企業などが連なる構造が効率的だった。部品数が多い分、雇用の創出にもつながっていた。

 これに対しEVの構造は極めてシンプル、基本的には電池とモーター、これをコントロールする制御機器があればいい。部品数はガソリン車に比べ極端に少ないが、基幹部品の電池の性能向上や車体に使用する新素材開発はこれからが本番。自動運転技術も実用レベルに到達するには、まだまだ改善が必要だ。

 自動車産業は、動力源がモーターに移行するプロセスで、関連産業や雇用が部品製造から電池開発などに拡散していくことになる。EV開発は世界の名だたるメーカーが参戦、中国も自国メーカー育成に力を入れ始めており、日本としてはここで競り負けるわけにはいかない。

 EV本格化に伴って生じる技術の進展は、個々のメーカーが努力を重ねることはもちろんだが、必要に応じ政府の支援も検討すべきだろう。産業としての潜在力を考えれば、官民挙げた取り組みの妥当性は検討してもいいのではないか。

 EVは大気汚染や地球温暖化の防止に寄与する。しかし、車から排ガスが出ないとしても、車に充電する電気をつくる際に、温室効果ガスが出てしまえば、その効果は疑問視せざるを得ない。

 EVの進展と並行して太陽光や風力などの再生可能エネルギーの比率を上げることが不可欠だろう。環境省、経済産業省など関係省庁には、EV開発本格化の意味合いを考慮したエネルギー政策に取り組むことを求めたい。

 EVは走行距離が短いことなどがネックだったが、フランス、英国が2040年までにガソリン車販売を禁止する目標を打ち出し、中国もこれに続く方針を示し、世界の有力メーカーが大きくEVにかじを切った。

 EVに本腰ではなかったトヨタ自動車もマツダと提携しEVを共同開発することになった。世界で最も売れているEV「リーフ」を擁する日産自動車は今月、新型モデルを発表、先駆者として首位を死守する構えを鮮明にした。EV開発競争の激化を歓迎したい。(共同通信・高山一郎)

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