岡山市の学校法人「加計(かけ)学園」が国家戦略特区制度により愛媛県今治市に獣医学部を新設する計画を認めるか審査してきた文部科学省の大学設置・学校法人審議会は判断を保留すると正式に決めた。林芳正文科相への答申は10月以降にずれ込む。学園に教育内容などの課題を指摘して計画見直しを求めた上で審査を続け、改めて判断する。

 文科省によると、判断の保留は珍しくなく、ほとんどのケースで計画見直しを経て最終的に認められているという。だが加計学園が特区の事業者に選定された過程に「加計ありき」の疑念が深まり、数々の疑問が噴き出す中、9月最終週に召集される見通しの臨時国会で野党の追及を勢いづかせないため答申を延期したとの見方まである。

 さらに「近年の獣医師の需要動向を考慮」など、2015年6月に閣議決定された獣医学部新設の4条件を加計学園の計画がクリアしているのかも、いまだに定かではない。今治市が無償譲渡した敷地では研究施設などの建設が着々と進んでいるが、なし崩し的に学部新設に至り、疑問が置き去りにされるようなことがあってはならない。

 非公開で行われている設置審の審査と、4条件に合致しているとの内閣府の判断について、政府が議論の詳細な経緯などの情報を公開するよう求める。徹底した検証なくして、安倍晋三首相が繰り返し強調する「丁寧な説明」は果たせない。

 加計学園の獣医学部新設を巡っては3月、今治市が所有地を無償譲渡し、県とともに最大96億円に上る施設整備費助成を行うと決め、翌月には大学教授らで構成する設置審が文科相の諮問を受けて教育内容や設備、財務状況など多岐にわたる項目を審査。既に入学定員や教員の構成について見直しを求め、学園も計画の修正に応じている。

 入学定員は当初160人で、獣医師を養成する全国の学部の総定員が2割増となるほどの規模だった。教員も、65歳以上と教員経験のない若手の割合が他の大学に比べて高いといわれていた。

 今回の判断保留は、学生の実習計画が不十分で学園が掲げるライフサイエンス分野の獣医師養成に課題があることなどが理由とみられる。学園は計画見直しに取り組むことになるが、それを解決できたとしてもなお問題は残る。閣議決定の4条件を満たしているか、はっきりしないからだ。

 獣医師の需要動向のほか「既存の獣医師養成でない構想」「既存の大学・学部では対応困難」といった条件について、前川喜平前文科次官は「合致するか十分な議論がされていない」と証言。ところが特区担当だった山本幸三・前地方創生担当相は「具体的な需要を完璧に描ける人はいない」「4条件は具体的な需要の数とか量は書いていない」と正面から疑問に答えようとはしなかった。

 条件を満たしているかとの問いにも「最終的に私が確認した」とし、根拠となるデータなどは一切示さなかった。巨額の公金がつぎ込まれる事業の大前提である条件が満たされていることすら明らかにされていない。

 首相の友人が理事長を務める加計学園が「総理のご意向」の恩恵にあずかり、優遇されたのではという疑念は根強い。「一点の曇りもない」といった通り一遍の説明では取り除けないことを政府は肝に銘じるべきだ。(共同通信・堤秀司)

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