「金色に輝くオルゴール時計」

 国の重要文化財に指定されている武雄鍋島家洋学関係資料の中に、金色に輝くオルゴール時計があります。中央に文字盤を据え、その脇には左手に剣を持ち、右手は鹿の角に手をかけたような女性を配した、装飾性に富む意匠が目をひきます。

 時計と言えば、基本は長針と短針の2本針。しかし、この時計は針が1本だけ。しかも文字盤を見ると「九・八・七・六・五・四」の漢数字が半周ずつ両側に刻まれています。

 江戸時代、日本の時間は午前0時が九ツで、およそ2時間おきに八ツ、七ツと数え、四ツが午前10時、そして午後0時は再び九ツで、同様に2時間おきに推移しました。ただ常に、夜が明けた時が明けの「六ツ」、日が暮れた時が暮れの「六ツ」でした。つまり日本では、夏は「明け六ツ」から「暮れ六ツ」までの時間が長く、逆に冬には短かったのです。当時の日本人は、お天道様が出ている時間が生活の中心であったわけで、季節によって変化する時間の観念を不定時法と呼びます。

 この時計は、そうした日本人の不定時法の観念に合わせて、文字盤の漢数字の間隔を微妙に変え、また回転するように細工されています。輸入された当時は2本針であったものを、あえて1本針に加工したのです。細工したのはたぶん、武雄が禄を与えて雇っていた長崎・新大工町の金物職人金子吉兵衛。珍しい舶来の時計をただ好奇の目で眺めただけではなく、武雄ではこれを生活のリズムに合わせて手を加えた、まさに日本のモノづくりの原点が見て取れる貴重な資料だと言えます。

 ところで、時計の台座部分に、「Changez(曲を変える)」「Jouez(演奏する)」の二つのボタンがあります。どんなメロディーが流れたのでしょう。聴いてみたいと思うのは私だけでしょうか?

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