「EU離脱は英国経済にとってマイナスになる」と訴える岩田健治教授=佐賀市の県国際交流プラザ

■欧州統合利益見るべき

 英国の欧州連合(EU)離脱問題について考えるセミナーが27日、佐賀市であった。九州大大学院教授で同大EUセンター長の岩田健治氏が、英国のEU離脱を経済的な側面から解説。EU内で最も多く直接投資を受け入れている英国が離脱する影響は大きく、離脱交渉が長引けば進出する日本企業にも大きな打撃になると指摘した。

 セミナーは県EU協会などが主催し、同協会事務局長の八谷まち子氏も講演した。岩田氏の講演要旨を紹介する。

【講演要旨】

 英国のEU離脱派は、欧州統合による利益についてではなく、民主主義や独立、(EU本部がある)ブリュッセルが物事を全部決めていいのかという、二項対立の問題点を提起した。統合の利益を本当に忘れ去っていいのかと問いたい。

 離脱派はEUへの拠出金の多さを批判していた。拠出金の絶対額は3番目に多いが、対GDP比では0・3%と小さい。大きな国の割には拠出額は少ない。

 「ブリュッセル」への不満についてはどうか。EUは立法権限も持ち、「国」として動いている。各国が議論をした上で権限を移してきたはずなのに、今ごろ言ってどうなるのかと思う。こうした不満の背景には、リーマン・ショック後の低成長がある。

 統合の効果はある。1人当たりGDPを見ると、EUに入ることで貧しい国が豊かになり、生活水準の差が縮まった。EUという統合体があることで、人々が利益を手に入れたということだ。

 EC加盟後、英国の主要な貿易相手は英連邦からECに移り、現在でも輸出の多くはEU向けだ。英国の自動車メーカーは次々に買収されたが、自動車が対欧州輸出品の筆頭。これは日本など世界のメーカーが工場を置いて生産しているからだ。

 英国はEU域内で最も多く直接投資を受け入れている。世界からの投資で雇用を守り、GDPを成長させてきた。離脱してしまうと関税がかかるため、投資をやめる動きが出てくる。これはどう考えても英国経済にとってマイナスだ。

 統合の利益を配分してきたEUも、通貨がユーロに統合された1999年以降は1人当たりGDPに格差が生まれてきた。ドイツが独り勝ちし、ドイツとイタリアでは水準が3割違う。統合のありがたさがなくなってきた。これが英国のEU離脱後のヨーロッパ側の最大の問題点だ。

 離脱の手続きは、まず英国がEUに「通知」し、原則2年以内に新たな貿易投資協定がつくられる。だが、時間を稼ぎたい英国はまだ通知をしていない。離脱後のEUとの関係では、EU市場に全面的にアクセスができ、実質的には残留に近い「ノルウェー型」の可能性もあるが、これはEUが決めた法体系を一方的に受け入れることになる。英国は大変困難な状況に陥っているといえる。

 日本企業にとっても影響は大きい。世界貿易機関(WTO)が定める関税率の枠内で英国がEUにアクセスすることになれば、関税の影響を受けるため拠点見直しが迫られる。EUとの交渉が長引けば、選択肢の見通しが立たない不透明な状況が続く恐れもある。

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