鹿児島県の三反園訓(みたぞのさとし)知事が、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)を直ちに停止させて特別点検するよう、九電に要請した。

 特別点検に加えて三反園知事は、原発周辺の活断層の調査や、原発事故時の避難計画に対する支援強化なども求めている。原発を止める法的な権限がないにもかかわらず、知事が停止要請に踏み切った背景には、熊本地震で県民の不安が高まっているという切実な事情がある。

 震度7クラスが連発した熊本地震は、これまでの常識を根底から覆した。従来考えられていた「本震-余震」のパターンが崩れ、最初の地震よりも大きな揺れが襲う「前震-本震」型。しかも、群発する過程では震源が東へ西へと大きく広がりもした。

 川内原発は大丈夫なのか、住民の間に不安が広がったのも当然だろう。7月の知事選で三反園氏は、原発停止を掲げて選挙戦を戦い、再稼働を容認した現職に大きな票差をつけて破った。ここに、民意が示されたと言っていい。

 熊本地震で浮き彫りになったのは、土砂災害が起きれば、住民の移動が極めて難しくなるという現実だ。複合災害に見舞われたときに、現在の避難計画が本当に機能するのか疑わしい。三反園知事は当選後、川内原発周辺を視察して住民の避難経路などを確認し、前知事時代に作られた避難計画を見直す考えも表明している。

 今回の知事の要請を受けて九電は、来月初旬にも対応を回答するようだが、民意をないがしろにしないよう強く求めたい。

 九電の瓜生(うりゅう)道明社長はこれまで、「地震後(非常時の)緊急停止や冷却機能が保たれていることなどを確認した」と述べ、問題はないという認識を示してきた。だが、熊本地震で危ぶまれているのは、今回の地震による直接の被害だけではないはずだ。

 これまでの九電の対応を振り返ると、原発事故が起きた場合に拠点になる緊急時対策所の取り扱いひとつとっても、当初は「免震」構造で造るとしていたが、曲折の末、「耐震」構造へと転換した。免震と耐震では建物内の機器の安全性は格段に違うはずだが、実績がないという理由だけで安全対策を後退させてしまった。

 こうした九電の対応ぶりもまた、住民の不安をかきたてた要因ではないか。

 東日本大震災で起きた東京電力福島第1原発の事故を受けて、日本の原発規制は大きく変わったはずだった。中でも、新たに明らかになった知見を積極的に反映させていく「バックフィット」という考え方を取り入れたのは、事故をふたたび起こさないという覚悟の表れではなかったか。

 だが、熊本地震で得られた知見を取り入れて、規制委がこれまでの規制の在り方を見直す気配はない。田中俊一委員長は、三反園知事の発言を「何を点検するのか理解できない」と突き放しもした。

 川内原発は今後、1号機が10月、2号機が12月に定期点検を予定している。今回の即時停止要請に応じる代わりに、単に定期点検の時期を前倒しするような対応ではまったく意味がない。住民の不安を払しょくするために何ができるのか、再点検の中身そのものが問われると指摘しておきたい。(古賀史生)

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