不妊に悩む女性の卵巣から細胞のエネルギーを作り出す細胞内小器官「ミトコンドリア」を取り出し、体外受精の際に卵子に移植したところ、2人で妊娠に成功したと、大阪市の不妊治療クリニックが29日発表した。

 この不妊治療は米国の企業が開発。ミトコンドリアの移植で、加齢で老化した卵子の質の改善を図るが、仕組みはよく分かっておらず、有効性や安全性を懸念する専門家もいる。海外では約270例以上行われ、約30人が出産に至ったとされる。昨年12月に日本産科婦人科学会が臨床研究としての実施を認めていた。

 発表した「HORACグランフロント大阪クリニック」の森本義晴院長によると、不妊治療を受けても妊娠しなかった27~46歳の女性25人から卵巣組織を摘出。うち12人で卵子にミトコンドリアを移植した上で受精卵を作り、これまでに6人の子宮に戻した。27歳と33歳の女性が妊娠に至ったという。費用は約250万円。

 森本院長は「なぜミトコンドリア移植で卵子の質が改善するかは全く分かっていない。生まれてくる子どもへの影響と併せて今後検証したい」と話し、実施例を日本産科婦人科学会へ報告するとしている。【共同】

=識者談話= 妥当性に論争ある技術

 石井哲也・北海道大教授(生命倫理学)の話 卵巣組織から取り出したミトコンドリアが卵子の質の改善に役立つという根拠ははっきりせず、妥当性に論争がある技術だ。移植するミトコンドリアが正常であるかどうかも不明で、不妊治療に使う前に基礎研究で科学的根拠を確かめる必要がある。生まれてくる子どもの健康に影響する可能性のある実験的な医療で、希望者は慎重に検討するべきだ。

このエントリーをはてなブックマークに追加