東アジア情勢が、新たな局面にさしかかっている。慰安婦問題の解決に一定のめどがついて改善した日韓関係に対して、これまでは歴史認識で歩調を合わせてきた中国-韓国の間にすきま風が吹き始めた。日中韓3カ国それぞれの距離感が変化する一方、北朝鮮の脅威が目に見えて増している。

 日本の防空識別圏内に落下した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験。北朝鮮は数十キロしかなかった飛距離を、今回、一気に500キロへと延ばした。通常の発射角度を取れば千キロ超に達するとみられ、日本列島全体を射程に収めた可能性が出てきた。

 SLBMは潜水艦から発射するという特性から、事前に発射の兆候を把握するのが難しく、いつ、どこから攻撃してくるか分からない。核爆弾の小型・軽量化が進み、核弾頭が搭載されれば、韓国や日本を守ってきた、米国の「核の傘」が無力化されてしまう恐れさえある。

 軍事力を増強し続ける北朝鮮に、日本を含めた周辺国はどう対抗していくべきだろうか。

 先日、日本で開かれた日中韓外相会談では、北朝鮮に自制を求めるとともに、3カ国が連携を強化させる方針を確認した。日本で日中韓外相会談が開かれたのは約5年5カ月ぶりで、中国の王毅外相の来日は、現在の習近平体制になって初めてでもあった。

 北朝鮮の後ろ盾になってきた中国が加わり、日中韓3カ国が足並みをそろえた意味は小さくない。

 これまでの3カ国の関係は、歴史問題で協力する日韓に対して、日本が孤立する場面が目立った。今回の日中韓外相会合では、その構図の変化がはっきりと見て取れた。

 特に日韓関係で慰安婦問題が前進したのが大きい。元慰安婦を支援する財団へ日本側が10億円を拠出し、医療や介護、親族への奨学金などとして1人あたり1億ウォン(1千万円)を上限に支出するなど具体的な形が見えてきた。いまだにソウルの日本大使館前に設置された少女像の取り扱いが残ってはいるが、日韓両国が同じ方向で努力しているのは明らかだ。

 気がかりは、外相を来日させて軟化の兆しを見せたとはいえ、尖閣諸島の日本領海へ公船を送り込み続ける中国側の今後の対応だ。

 中国側は尖閣諸島周辺の日本の領海への侵入を常態化させており、このままでは不測の事態が起きかねない。日中両国間では、偶発的な衝突を避けるために「海上連絡メカニズム」の運用開始が重要との認識で一致しているが、事態をエスカレートさせないために、最優先で運用すべきだ。

 中国側が強硬一辺倒から転じた背景には来月、20カ国・地域(G20)首脳会合のホスト役が控えており、日本側との関係悪化は避けたいという思惑がある。G20で日中首脳会談が実現すれば、昨年4月以来となる。日本側としてはこの機に、あくまでも対話による解決を目指している姿勢を国際社会にも示しておきたい。

 北朝鮮の脅威が増す中、周辺諸国との関係改善は、日本の安全保障に直結する。暴走する北朝鮮に対抗する上で、中国側との良好な関係づくりは欠かせない。日韓に加えて、日中関係の改善を進め、北朝鮮包囲網の構築を急がねばならない。(古賀史生)

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