久留米市の競技団体から借りた舟に乗り込み、練習する鳥栖工業高カヌー同好会の生徒たち(奥)。宇木浩二監督が川岸から指導する=2月25日、筑後川

■国体視野に底辺拡大

 2月下旬、寒風が吹き付ける福岡県久留米市の筑後川。「レディ、セット、ゴー」。鳥栖工業高カヌー同好会の生徒2人が銀色きらめく水面にパドル(櫂(かい))を沈ませ滑走していった。

 自前の舟は持たない。練習でも試合でも久留米市の競技団体や他校から借りている。それでも、昨年の全国総体で上位入賞者を出すなど結果を残してきた。5年前に鳥栖工に赴任し、カヌー普及に力を入れてきた宇木浩二監督(45)は言う。「高校生から始めると活動期間は実質2年。全国レベルに届かせるにはどうしても『詰め込み』になってしまう。小さい頃から水に親しめる環境があるのが理想だが…」

 2023年に佐賀県で開催される国民体育大会・全国障害者スポーツ大会。昨年7月、県や体協などは国体に向けて競技力向上基本計画をまとめた。組織体制の整備、選手の発掘や育成、指導体制確立、環境整備の四つを柱に掲げた。

 新年度、県が特に注力するのが「底辺拡大」だ。当初予算案では大会に向けた競技力向上の費用として前年度の1・6倍となる約3億円を組んだ。

 6年後に少年の部(中3~高3)となって出場する世代を「ターゲットエイジ」と位置付け。小学校に出向き競技人口の少ないスポーツの体験企画や、中学生がさまざまな競技に一堂に出会える機会をつくるトライアウト事業を始める。

 カヌーも競技者が少なく、高校で部活動があるのは伊万里農林と神埼、同好会は鳥栖工だけ。中学生ら高校生以外は神埼地区のカヌークラブが担っている。宇木監督は「ほかの競技でも言えることだが、進学時に身近に受け皿がなくて競技から離れる例は少なくない。体験事業も開催回数や内容を工夫してまずは『楽しい』と感じてもらう必要がある」と指摘する。

 地元開催となった1976年の若楠国体で佐賀県勢は、総合成績で1位を獲得した。その後は30~40位台に低迷していることが多い。佐賀国体では再び1位を目指す計画。県文化・スポーツ交流局の白井誠局長は「佐賀らしく強くなっていくには満遍なくさまざまな種目でその人の特徴に合った得意なものを見つけ出さないといけない。優秀な選手が指導者になっていく循環をつくり、しっかりとした地力をつけていくことが大事」と話す。

 東京五輪に関連して「レガシー(遺産)」という言葉が頻繁に飛び交う。佐賀国体の基本構想では、誰もがスポーツを楽しみ、語り合うことが生活に根付き、アスリートの活躍で県民に元気を与えることなどを「さがんレガシー」とうたう。山口祥義知事は2月28日の県議会で訴えた。「例えば市町では特定の競技種目をわが町のスポーツとして育てたり、住民が健康的に暮らせるまちづくりとして推進したり。大会後に何を残すかが重要だ」

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