その水は、息をのむほど透明だった。岩手県の鍾乳洞「龍泉洞」で初めて見た地底湖は、どこまでも透き通っていた。青い水をたたえた地底湖は最も深い場所で水深98メートル。真夏なのに気温は10度ほどしかない。寒さも忘れ、水底をのぞき込んだ◆日本三大鍾乳洞の一つで、これまでに見つかった八つの地底湖のうち、三つが公開されている。洞内に住む珍しいコウモリたちとともに、国の天然記念物に指定されてもいる。その龍泉洞から、わずか数キロの川沿いに建てられた高齢者グループホームが、暴れる濁流にのみ込まれた◆統計開始以来、初めて東北に上陸した台風。列島の南に居座って力をたくわえた台風10号は、これまでに例がないルートを進み、東北・北海道に大打撃を与えた。逃げ遅れたグループホームの9人をはじめ、10人以上が亡くなった◆きょうは、1923(大正12)年の関東大震災にちなむ「防災の日」でもある。関東大震災はマグニチュード7・9の猛烈な揺れに加えて、各地で発生した火災に巻き込まれて犠牲が広がった。当時、関東地方には強い風が吹いていたが、それも石川県付近にあった台風のあおりだった◆龍泉洞の名前は、洞内で見つかった龍の形をした岩に由来する。犠牲者の冥福を祈りつつ、穏やかな川を“暴れる龍”に変えた台風に憎しみが募る。(史)

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