磁器製の香水瓶開発など海外戦略を積極的に進める畑萬陶苑の畑石眞二社長=伊万里市大川内山

■「真の評価」へ一歩ずつ

 欧州での「再評価」を目指した出展は終盤を迎えていた。今年1月、フランス・パリで開かれた世界最高峰のインテリアとデザインの国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」。佐賀県の有田焼創業400年事業の集大成の年、特設ブースには県内の窯元、商社8社の商品がずらりと並んだ。

 「見積もりをくれ」。2014年の初出展で、商談前から反響はあった。現地での説明会にはバイヤーやメディア、デザイン関係者が集った。「素晴らしい」と口をそろえたが、2000年代初頭に旧有田焼輸出商社が欧州市場に挑んだときと同様、知名度不足は続いていた。有田が歴史のある産地であること。パリ万博で欧州と接点があったこと…。一つずつ説明した。

 佐賀を代表する地場産業の有田焼の売り上げはピーク時の6分の1に落ち込んでいる。県有田焼創業400年事業推進グループの石井正宏推進監(56)は欧州への挑戦の意義を強調する。「創業400年を契機に、民間レベルではなかなか取り組めない海外展開を県がリードすることで、事業者のリスクを軽減し、産地の新たな挑戦を後押しする」

 有田焼といえば柿右衛門様式などを思い浮かべる国内の消費者と異なり、今の欧州のバイヤーにイメージできる「アリタ」はないのかもしれない。「だからこそ、こちらから提案することが欠かせない。顧客が欲しいものを実現できる技術が有田にはある」と石井推進監。見本市期間中は出展各社に専属通訳を付け、詳細に説明できるようにした。会期前後にも商品を確かめることができるショールームのような場を設け、対応できるようにもした。

 出展後、海外からの注文が増えている窯元はある。伊万里市大川内山の畑萬陶苑。情報が海外メディアやインターネットで広がり、欧州から大川内山に足を運ぶファンも現れた。

 畑石眞二社長(61)は30年前から欧州を意識してきた。「江戸時代に有田産の『古伊万里』がもてはやされたけれど、次は大川内山で将軍家の献上用に焼かれた『鍋島』の様式美を発信したい」。欧州の香り文化に着目し、鍋島の加飾による付加価値を加えた磁器製香水瓶の開発を進めてきた。「400年事業は絶好のチャンスだった。飛びつくしかないでしょう」

 来年1月のメゾン・エ・オブジェには、畑萬陶苑を含む4社が出展を継続する意向を示している。これまで事業主体だった県は予算枠を縮小、出展を補助事業と位置付け、支える側に回る。窯元や商社は、至れり尽くせりの状況から独り立ちが迫られる境遇になる。

 「欧州への足掛かりはつくってもらった。次のステップは各社がリスクを負うことになるが、努力を続ける」と畑石社長。真の評価を得るため、階段を上る。

■佐賀県の有田焼創業400年事業

 市場開拓や産業基盤整備とともに、観光や文化の分野とも連携して有田焼のブランド化を推進する事業。2016年度までの4年間の総事業費は約23億円に上る。海外展開ではフランスやイタリア、オランダなどで情報を発信。事業開始時に約5000万円だった輸出額を20年度までに5億円、約42億円だった産地売上額を54億円まで増やすことを目指している。

=有田焼400年=

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