鳥栖市は本年度からトイレを改修する市立小中学校10校について、心と体の性が一致しないトランスジェンダー(性同一性障害を含む)の児童生徒にも配慮し、男子トイレから小便器をなくし、すべて個室で洋式化する方針を決めた。多様性を尊重する先駆的な取り組みに注目したい。

 家庭のトイレは9割以上が洋式化されているのに対し、小中学校は全国的に耐震化優先で洋式化が遅れている。鳥栖市内の小中学校の洋式化率は40%台半ばで、古くて「臭い」「汚い」「暗い」と評判が悪い。

 こうした中で昨年9月、同市小中学校PTA連合会が市へトイレ改修の要望書を提出。市議会も9月定例会で早期改修を求める決議をしたのを受けて、市教委は改修を急ぐこととし12月市議会に設計費などを計上した。ただし、このときは大規模改修中だった田代中と同じように男子トイレの小便器を残す計画だった。

 年明け後、視察や議論を重ね、「だれもが最も利用しやすいトイレ整備を」と考えて「思い切った判断」(市教委)、つまり小便器をなくす方針に傾いていった。3月に行った保護者へのアンケートで6割が賛成したことも後押しした。

 佐賀県内で性的少数者(LGBT)を支援している団体「アオ・アクア」の代表原亮さん(21)に今回のトイレ洋式化について意見を聞いた。女性として生まれ、普段は男性として生活している原さんは、トランスジェンダーへの配慮をトイレ洋式化の理由の一つにしたことに「性の多様性への理解が広がる一歩になる」と期待を表明した。

 トランスジェンダーの人は、外出先では極力トイレに行かないようにするという。例えば、女性として生まれ男性として生活している人は、女性トイレには抵抗がある。かといって、男性トイレに入って知っている人に会うのも気まずい。いろいろ考えてしまってトイレを我慢するようになり、ぼうこう炎になる人が少なくないという。

 17年度から使われている高校家庭科の教科書には「LGBT」という言葉が初めて登場し、県内の高校でも採用されている。自分らしい性のあり方や多様な性について考える動きは教科書でも確実に広がりを見せている。鳥栖市の取り組みは、こうした流れがハード面へも展開し始めたということを示している。

 原さんに理想の社会を問うと「だれもが生活しやすい社会」と返ってきた。その実現のためには私たち一人一人が少しずつ理解を深め、積極的に多様性を認めようとする姿勢が大切だ。学校トイレの洋式化が、その一歩となることを期待したい。(高井誠)

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