トレーナーの学生の支援を受け、体幹を保つ訓練に励む小学4年のアヤト君=8月19日、波戸岬少年自然の家

頑張った訓練の後はみんなで食事。テーブルを囲む障害児・者、母親、トレーナー

 「佐賀心理リハビリテーションキャンプ」が今年も佐賀県唐津市鎮西町の波戸岬少年自然の家を会場に開かれた。脳性まひなど障害児・者と保護者、学生らが一緒に寝泊まりしながら「動作訓練法」を学ぶ。1975年に始まり42回目。出会いを通じ「できないことではなく、できることを知り、支え合う場」となっている。

 「今朝、ひとりで寝返りを打っていたの。ほんと何年ぶりかしら。今回のキャンプの課題(寝返り)をもう達成できました」。8月中旬、5泊6日のキャンプ3日目。脳性まひの19歳の三男と参加していた廣久子さん(55)がうれしそうに報告した。周囲の母親たちも笑顔で応じ、「そうそう、うつぶせのトモちゃん(三男)しか見たことがなかったよね」と喜ぶ。

 脳性まひは筋肉の過度の緊張によって実際のまひ以上に生活、運動能力が低下する。キャンプは動作訓練法の実践の場として、県若楠ふたばの会などが夏休みに開催する。今年は自閉症やダウン症などの合併症を含め親子16組が参加した。

 ふたばの会会長の宮崎里奈さん(45)は脳性まひの次男(15)が2歳半の時、知人の紹介で参加した。「当時は苦悩と葛藤の渦中で、大きくなったらどうなるのだろうと不安ばかりだった」と振り返り、「訓練はもちろん、皆さんがどういう道をたどってこられたのか、教えてもらい、心の支えになった」と話す。

 当事者にとっても励みの場となる。鳥栖市で障害者支援のNPO理事長を務める芹田洋志さん(42)や、九州大大学院を修了し臨床心理士となった矢部乃梨子さん(31)は、幼い頃からキャンプに参加してきた。

 芹田さんは「自分より動きがスムーズな友達を見て、諦めなくていいんだと知った」といい、「大げさでなく、この場があったから生きてこられた」。矢部さんは「サポートを受けながら自分と向き合う日々は、自己肯定感の面でも意義は大きかった」と語る。

 キャンプのもうひとりの主役は、訓練を支援する学生や教育関係者だ。キャンプ長の飯塚一裕愛知教育大准教授は「細かく見ないと分からないけど、1週間でも確かな変化がある。そんな体験を共有することが共生社会の一歩になる」。相模原市の障害者施設での事件が障害者観を問う中、キャンプは今年も確かな足跡を残した。

【動作訓練法】機能回復のための集団療法として成瀬悟策九州大名誉教授が考案した。全国各地でキャンプが開催され、障害児・者の保護者でつくる県若楠ふたばの会は夏のキャンプのほか、月例会を開く。問い合わせは宮崎さん、電話090(9724)6089。

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