漁業での新規就業を目指して研修する大塚良秀さん(左)=2月中旬、唐津市

 「今は誰でん不漁。魚の餌になるイカナゴも全然おらんごとなった。市場に出荷しても、前からすると本当に値下がりしとる」。唐津市の唐房漁港。底引き網漁を50年以上続けてきた市内の70代男性は水産業の厳しい現状を嘆く。「『漁業をしたか』という人がおるなら自分の知っとることは教えたかけどね」

 玄海地区の漁業生産量は減少傾向が目立つ。1980年度には4万4827トンあったが、2014年度は9162トンと5分の1に落ち込んだ。水温上昇など環境の変化や、安価な外国産魚介類の流通-。さまざまな要因が考えられ、同時に担い手不足も大きな課題となっている。

 唐津市の県高等水産講習所は、漁業に必要な知識や資格の取得に励む研修施設だ。1年コースの「本科生」は定員20人程度で、18歳以上から30代中心に学ぶ。有明地区出身の入所者数は安定しているものの、地元の玄海地区はゼロの年もあった。

 漁業の新規就業者に対する国の給付金制度整備を機に、講習所は14年度以降、漁家以外からの就業希望者も受け入れてきた。研修中は年150万円を支給。アルバイトは認められているものの、月額換算では12万5千円。就業希望の相談があっても、家族を持つ人らにとっては条件が合わず、断念する例も少なくなかったという。

 県は新年度当初予算案に、漁業者の元で働きながら講習所で学びたい人への給付金事業などに1003万円を盛り込んだ。研修を受ける就業希望者へ給付金として日額6250円を補助し、雇用する受け入れ漁業者には日額7千円の謝金を出す。例えば研修日程を柔軟にして月に15日働き、講習所で5日勉強したモデルケースでは雇用賃金と合わせて月15万1千円になる。

 現在、国の給付金制度を活用して研修を受講する熊本県出身の大塚良秀さん(19)は「将来的には『釣り』を軸にいろいろと手掛けてみたい。ただ、どうやって船を持つかといった悩みはある」と漏らす。間口を広げる今回の新規事業。研修後にも受け入れ漁業者に対する国の支援制度はあるが、初期投資資金の工面など課題も残る。

 県水産課は「国の漁船リース事業や、県の複合経営を支援する事業といったさまざまな制度を活用してもらい、市町や漁協ともしっかり連携し支えていくことが必要」とする。

 タイ網漁を中心に手掛け、この春から大塚さんを受け入れる唐津市の吉田典功さん(48)。漁獲高減に合わせてカキ養殖など経営を多角化してきた。「時代に対応し、生計が立てられることはもちろん、自然の恵みを頂いて生活するということに魅力を感じるかどうかじゃないか」。農漁業で「起業」する志の大切さを指摘した。=おわり

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