佐賀県の米国市場開拓事業で、出展を計画する国際見本市「NY NOW(ニューヨーク・ナウ)」=8月、米ニューヨーク・マンハッタン(佐賀県提供)

■米国進出狙い先遣隊

 「先遣隊」は米ニューヨークに飛んだ。8月下旬、マンハッタンで開かれた北米最大級のインテリアや日用品の見本市。佐賀県有田焼創業400年事業グループの堀岡真也さん(45)は、日本人事業者に米国市場の動向を尋ねて回った。

 県は本年度、有田焼の事業者が米国で販路を開拓する足がかりにするため、事前調査に乗り出した。

 即断即決型が多いバイヤーの傾向や、食生活など現地のライフスタイルを学ぶ必要性…。さまざまなアドバイスを受けていると、1人から忠告された。「すぐにモノが売れると思ってやってくる日本人はいっぱいいる。でも、もうからないから数年で撤退してしまう。本気で進出するなら、長く売る覚悟で来ないと」

 消費大国アメリカ。ここは有田焼業界にとって、ほとんど手つかずの国だ。

 大量生産、大量消費の文化の中で、食器に求められるのは手頃な値段。17世紀の欧州の王侯貴族に象徴されるように、有田焼の美しさをめでる素地がある国々と比べれば、反応は鈍い。県陶磁器工業協同組合の百武龍太郎専務(64)はこぼす。「器への意識が違う」

 1970年代からは円高基調や関税が障壁になり、商品の価格もつり上がった。窯元や商社は進出に二の足を踏んできた。

 TPP(環太平洋連携協定)で関税が撤廃される見通しになると、ムードが変わる。追い風と捉え、「米国市場の雰囲気を肌で感じる機会が欲しい」。県が、有田焼の窯元や商社から聞き取った調査では、こうした意見が多かった。

 モノに対して欧州は伝統を重んじ、米国は斬新さを求める-。一般的にそう言われるが、実際はどうなのか。現地調査を手掛かりに、継続的な協力者や取引先探しは始まっている。

 事業に参加している有田ポーセリンラボ(西松浦郡有田町)は昨年秋から独自にロサンジェルスのケーブルテレビでCMを放映し、ウェブ販売に取り組む。

 長崎県の波佐見焼が長年、米国への輸出を手掛けているが、社長の松本哲さん(44)は「有田焼の強みは手間をかけた高級感」と、大量生産地との違いを示す。花瓶や置物などのインテリアにも力を入れ、放送エリアの高級住宅街からの反応をうかがう。「富裕層が使えばアピール効果は大きい」と戦略を立てる。

 めざましい発展を遂げているドバイなど、中東も米国と並ぶ大きな商圏になり得るが、取引経験がある松本さんは「中東も米国も、富裕層が求めるのは、欧州で認められた品」と話す。

 ついて回る「欧州の評価」。今年まで3年間出展したフランスの国際見本市での評判は武器にはなるが、米国での県の支援事業は18年度までの3年計画。時間は限られている。

■米国での新市場開拓支援事業

 有田焼創業400年事業の欧州での取り組みを生かし、マーケットとして有望な米国市場開拓につなげようと、佐賀県が3年計画で実施する。1年目の本年度は現地調査に加え、窯元や商社向けのセミナーなど「学び」が中心。飲食店でのテストマーケティングにも取り組む。2年目以降は、見本市への本格的な出展を目指す。本年度事業費は3650万円。

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