寝ている間を利用して体への負荷が少ない長時間透析をする「オーバーナイト透析」のベッド。翌朝の寝覚めが良く、社会復帰を果たす患者も多い=伊万里市の前田病院

■時間かけ治療体への負担少なく

 糖尿病などによる慢性腎不全の患者が行う人工透析で、夜間に寝ている間に完了させる「オーバーナイト透析」が好評を得ている。佐賀県内で唯一対応する伊万里市の前田病院は県内外から患者を受け入れ、利用ベッド数を8床から13床に増床した。夜間に実施することで仕事を休む必要がない上、体への負担が少なくて高い効果が得られる長時間透析が可能で、患者の就労支援や生活の質向上につながっている。

 透析は血液中に蓄積された毒素を体外に排出する治療で、通常は2日に1度4~6時間行う。病院の開院時間に合わせると仕事を休むか早退する必要がある。オーバーナイト透析は午後10時半までに来院して睡眠中の8~9時間で行うため、仕事を終えた後もゆとりをもって過ごすことができ、翌朝もそのまま通勤が可能という。患者の特別な費用負担もない。

 オーバーナイトは長時間透析を長い期間継続できるという利点もある。近年は苦痛を訴える患者の要望もあって透析時間を4時間程度に短くするのが主流だが、前田病院では以前から6時間以上の長時間透析を提唱してきた。時間をかけることで老廃物を確実に除去し、心臓にかかる負担も少なくなる。厳しい食事制限が不要で、透析後の疲労感も低減できるという。

 透析患者は10年で半数が亡くなるとされるが、前田病院がまとめた27年間の臨床データによると、長時間透析患者の生存率は10年後、20年後ともに国内平均の2倍となっている。

 「前は具合が悪くなって仕事を抜けることもよくあったけれど、今は全くなくなった」。治療のために伊万里市内に移り住み、映像制作の仕事をする下田真作さん(42)は、オーバーナイトを始めて丸1年。短時間透析時は体力を奪われて気持ちも沈んでいたが、今では県外を飛び回ることもできるようになった。「思い通りに仕事ができて、精神面でも収入の面でも全然違う」と充実ぶりを語る。

 前田病院は昨年6月に開院100周年事業として福岡市・天神に「天神オーバーナイト透析&内科」を開設した。都市圏は特に需要が多く、フル稼働の状況が続く。病院を運営する医療法人「幸善会」の前田利朗理事長は「医師やスタッフの確保もあるので急速に広げることは困難だが、透析で悩む人の希望になれるよう努力したい」と話す。

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