黒澤明監督の映画「どん底」(1957年公開)は江戸のころ、貧しい長屋に身を寄せる住人のさまざまな人間模様を描いた時代劇である。落ちぶれた旗本や遊び人、飴(あめ)売り、職人とその寝たきりの妻、泥棒…。群像劇だが、やはり三船敏郎と山田五十鈴(いすず)の演技が鬼気迫っていた◆底辺にいて、いがみ合いながらも、どこか人をいたわるやさしさがある。「どんな人間でも大切にしてやんなきゃいけないよ」。そんなセリフを住人が口にする。惨めな外見に比して、不思議な明るさがあり、黒澤流のヒューマニズムがにじんでいる◆長屋は一つ屋根の下の寄り合い所帯。この政党・民進党もそんな形容がピタッとくる。党内にさまざまなグループがあり、生まれ育ちで溝がある。その新しい看板を決める代表選は蓮舫氏、前原誠司氏、玉木雄一郎氏による三つどもえ選となった◆党の歴史を見れば、蓮舫氏は第3世代、前原氏は第2世代、玉木氏は第4世代になるらしい。野党共闘をどうするかや党勢回復策が争点になりそうだが、世代交代がなるかどうかも気になる◆人生でどん底に落ちたら、どうするか。映画では住人たちに、お遍路の男がはい上がる道を授ける。「自民1強」の中で存在感を示せない民進党。果たして、だれが活路を授け、一致団結、反転攻勢へ導くのか、注目である。(章)

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