弁護士の安永恵子さん=佐賀市

■縛らず個人を尊重して

 現行憲法は、戦前の民法が定めていた家中心の戸主制度から女性を解放し、社会進出を後押ししたといわれている。個人の尊厳が重んじられ、多様な家族のあり方も生まれた。個人主義が進んだことで家族の絆が弱まったと捉え、家族尊重を憲法に明記するように求める意見もある。弁護士の安永恵子さん(43)はどう感じているのか、「男女同権」に向けた課題と併せて聞いた。

 <夫婦ともに弁護士。結婚や出産を機に、仕事を辞めざるを得ないという女性はいまだに多いが、子育てをしながら旧姓で働く>

 「仕事を辞めることは考えなかった。新しい姓だとリセットされて不利益が生じると思うから、通称として旧姓を使っています」

 「離婚問題にも携わっていますが、女性からの申し出が圧倒的に多い。専業主婦として理想的な『奥さん業』を果たしてきた女性が、子どもが自立した後、人生をやり直したいと離婚に踏み切るケースもある。その場合、『自分が認められなかった』『仕事をしたかった』といった不満を抱えている。固定化した役割を押しつけられ、窮屈さを感じているのは、どうしても女性になっている」

 <憲法24条では『個人の尊厳と両性の本質的平等』を定めている>

 「家族という共同体の中で埋没するのではなく、一人一人にスポットを当てて尊重される形に変えたというのは画期的だった。自分を鑑みると、この男女平等という考え方がなかったら、やりたいこともできない、非常に生きづらい世の中だったでしょう」

 「近年は育児に熱心な父親も増えています。それでも、男性の育児休業への理解が進まず、職場や社会の中に『許さない』という風潮は残っている。現行憲法の下でも、意識改革など改善の余地はまだまだある」

 <2012年に自民党が発表した改憲草案には「家族は互いに助け合わなければならない」とする義務規定が盛り込まれている。前文では「和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」ともうたっている。伝統的な家族観への回帰が懸念され、家族による扶養などを促して国の財政負担を軽減する思惑も指摘されている>

 「家族の絆は自発的に生まれるもの。佐賀県内の事例を見ても、母親よりも父親の方が子育てに熱心なケースで父親の方が親権を得たり、子どもと一緒に暮らして成長を見守る『監護権者』として祖母が適任と判断されたりしている。個々の意思を尊重してこそ家族があるのではないでしょうか。改憲ではなく個別の法律などで対応した方が、本来の男女平等や家族というものが実現できると思う」

 「『こういう家族でありたい』という思いは人によって異なります。LGBT(性的少数者)で同性カップルの存在など、家族のかたちは変わりつつある。憲法改正によって『家族はこうあるべき』と縛り付けるのではなく、それぞれの定義があっていいのでは」

■やすなが・けいこ 1973年生まれ。青山学院大学法学部卒。2004年から弁護士として活動している。佐賀市。

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