採れたタケノコを調理するタイ人旅行者ら=佐賀市三瀬村の農家民宿「具座」

 JR佐賀駅からバスで北に約1時間。山に囲まれコンビニやテレビはないが、夜になれば見渡す限りの星空が広がる。そんな日本の田舎を肌で感じようと、外国人旅行者が佐賀市三瀬村の農家民宿「具座」に集まっている。フェイスブックなど会員制交流サイト(SNS)を中心に人気が広がり、昨年の外国人観光客は前年の3倍となる約100人に上った。山歩きや五右衛門風呂といった「田舎」体験を求める外国人客に同行し、足元の魅力を探った。

 4月中旬、佐賀駅からバスを利用し、タイのバンコクから2泊3日で4人の家族連れが訪れた。到着後、オーナーの藤瀬吉徳さん(63)が所有する山で山菜やタケノコ狩りへ。民宿へ戻ると、採れ立てのタケノコをかまど炊きし、妻のみどりさん(61)と共に夕食の準備に取りかかった。

 手伝いに訪れた集落支援員の女性も加わり、山の幸で彩った食卓を囲む。父親のソンポプ・テムクンキアトさん(46)は「これまで東京や大阪など大都市の主要な観光地を回ったが田舎は初めて。リラックスでき、すごく良い体験ができている」と満足げだ。

 夕食後、学生で長女のサチーダさん(19)は「ここには美しい自然がたくさんある」と庭に出て一面に広がる星空を見上げた。「人が温かく親切。いろんなことが経験できた。インスタグラムやフェイスブックで共有したい」

 「具座」で外国人の人気が出だしたのは昨年春ごろ。韓国の観光連盟職員がブログで紹介、タイのテレビドラマのロケ地にもなり、韓国、タイ、台湾などからの旅行者が増え始め、SNSを通じた「口コミ」で知名度が上がった。

 東京や大阪、京都などの定番ルートを回った「訪日リピーター」が、観光整備が行き届いていない地方を訪れているという。「旅行者にとって手間はかかるが、都会では体験できない『人との距離の近さ』が魅力なのでは」と藤瀬さん。「体験したことを旅行者がSNSで発信していることも増加の一因」とみる。

 「具座」は築100年の古民家で、客室は12畳と8畳の2部屋。体験メニューは田植えや川遊び、石釜料理作りなど約20種類をそろえる。外国人の宿泊予約はインターネットの翻訳機能を使いフェイスブックのメッセージ機能や、多言語の電話通訳にも対応する県の観光アプリを使ったスマホで受け付ける。予約が完了した旅行者の多くは佐賀駅からバスを使い、最寄りのバス停で下車、藤瀬夫妻が車で迎えに行く。

 「具座」の宿泊者数は昨年約500人で外国人が2割を占めるまでに。今年も1~4月(126人)は、国内と外国人でほぼ二分する状態で、さらに外国人の割合が上昇。大型連休中も韓国から団体客の予約が入っている。

 藤瀬さんは「最初は戸惑っていたが、何回か迎えるうちに自信がついてきた。スマホの翻訳機能も活用しながら、お互い簡単な英語とジェスチャーでなんとかやっている」と手応えを語る。一方で「他にも農家民宿はあるが、経営者の多くは高齢で外国人の接客に不慣れ。SNSの対応が難しいと感じる部分もある」と課題を挙げる。

 予約などスマホ一つでやりとりができる時代。田舎体験の旅が山間部に活路を開いている。

=現場を行く=

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