通りすがりのお寺で、こんな標語を見かけた。「高いつもりで低いのが教養」「低いつもりで高いのが気位」…。自己評価と実像には大きなギャップがあるという戒め「つもり違いの十箇(か)条」である◆「浅い知恵」に「深い欲望」、「薄い人情」に「厚い面皮」と続く。他人には厳しいくせに、自分のこととなると何かと言い訳をつけて甘くなりがち。そんな日頃のふるまいを突き付けられたような気になる。真っ白な紙に、堂々たる墨文字。思わずスマホでパシャリと撮った◆先日、ラジオ番組に出演した自民党の中谷元・前防衛相が、こんな「あいうえお作文」を披露していた。題して「権力者のあいうえお」。あせらず、威張らず、浮かれず、えこひいきせず、おごらず-。このあいうえおを戒めなければ、いかに権力者といえども信頼は得られないというわけだ◆高い支持率に陰りが見えてきた「安倍1強」に向けたメッセージに違いない。いつの時代も、手にした権力は人を慢心させるのだろう。古代ローマの歴史家タキトゥスも書いている。「人間は地位が高くなるほど、足元が滑りやすくなる」と◆私が見かけた十箇条の張り紙には、お寺さんからのメッセージも添えられていた。数々のつもり違いの後で「そのつもりで頑張りましょう」とある。心の中で「はいっ」と返事した。(史)

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