毎朝読む新聞で、最初に開くページは「おくやみ」。自分の知人や患者さんが載っていないか確認します。年齢を見て、自分より若くして天命を終えられた方に合掌します。

 私は5年半前にがんになりました。現在は日本人の2人に1人ががんになり、うち3人に1人が死亡する時代です。自分の死と向き合う中、再発をどう防ぐか真剣に考えました。

 まずは食事や睡眠に気を付け、生活リズムを改善しました。ただ、入院生活により筋肉量は急激に低下しました(体重は64キロから55キロへ)。転倒・骨折の原因になることはもちろんですが、その状態でがん治療を受けると死亡率が上がることが近年の研究で分かってきました。

 筋肉量の低下は、「サルコペニア」と呼ばれています。1989年にローゼンベルグによって提唱されました。海外の大規模な研究では、サルコペニアの患者さんは、重症の術後合併症が発生するリスクが3倍も高いことが分かっています。

 手術を受け、身体に強いストレスを受けた患者さんは、1週間程度は食事ではなく、骨格筋を分解してエネルギーを得ようとします。このとき、タンパク質の塊である筋肉が一定量なければ、ストレスをはね返すためのエネルギーが足りず、代謝やホルモンのバランスが乱れます。最終的に体調がすぐれなくなるのです。

 最近、「日刊ゲンダイ」にも「筋力低下でがん死亡率上昇『サルコペニア』をどう避ける」という記事が掲載されました。がんに備えて健康なうちからやっておくべきことは、「筋肉量の維持」。予後を良くするためにも、筋力が落ちないように、歩くことが大切です。私も毎朝ウオーキングを続けています。(佐賀大学保健管理センター長・産業医 佐藤 武)

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