がんの治療というと、手術、放射線、抗がん剤といった方法が思い浮かびますが、「監視療法」というのをご存じでしょうか。

 どのようながんにおいても早期発見や早期治療が原則ですが、この監視療法は、前立腺がんのうち早期がんのごく一部の病期のケースで選ぶことができる方法で、がんが発見されてから、しかるべき時期が来るまでは積極的な治療をせずに経過をみましょう、というものです(決して放置するものではありません)。

 前立腺がんの中には進行が早いものもありますが、多くはきちんと治療をすれば比較的おとなしく、進行も緩やかです。

 その中でも、組織検査で付けた悪性度の点数が低く、進行が遅いことが予想される場合に、すぐに治療をするのではなく、進行速度が上がった可能性のあるときに治療を始めるというのが監視療法です。

 治療を先延ばしにする期間には個人差があります。場合によっては治療を開始しないままに寿命を迎える方もおられます。治療をしない期間には、治療をすることによって起こる合併症や副作用を回避することができ、治療に必要な高額の医療費も掛からない、という恩恵を受けることができるのです。

 ご存じの通り、医療の進歩はいつの時代も目覚ましく、前立腺がんに対しても、昔は進行してから見つかる方が多かったのが、血液検査や組織検査が発達し、かなり早い段階で診断することが可能になりました。その結果、治療しなくても、寿命や日常生活にあまり影響を与えないケースがあることが分かってきたのです。

 ただ、日本では、がんとの共存に不安を感じる人も多く、欧米ほどは監視療法が好まれない傾向があります。しかし、治療の合併症や副作用を回避できるのは大きなメリットです。監視療法のご提案は限られた方にしかできないので、もしお話があったらぜひ前向きに考えていただきたい選択肢の一つなのです。(なかおたかこクリニック院長 中尾孝子)

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