松田一也町長

 県東端に位置し、福岡都心に近いベッドタウンとして発展を遂げてきた基山町。人口減の波が押し寄せていたが、近年は定住促進施策が奏功し、歯止めがかかりつつある。オーストラリア原産の大型鳥・エミューを生かした町おこしも全国的な注目を集めている。松田一也町長(60)に展望を聞いた。(聞き手=澤野善文編集局長)

 ■副町長を経て、町長就任2年目。これまでを振り返ってどうか。

 副町長として着任した当初は、県内ワースト2位の「消滅可能性都市」として位置づけられ、人口減が続いた。しかし最近は昨年3月時点の人口を底辺に、その数字を割っていない。歯止めがかかりつつある。町のいろんな場所で躍動や活力を感じることができ、ワクワク感が増している。

 ■中山間地の耕作放棄地でエミューを飼育する取り組みが注目を集めている。狙いと今後の展望は。

 エミューは肉、脂、羽根、卵など全ての部位が利用できる産業鳥。7月末のシンポジウムも関心度が高く、大成功だった。今後はまず、肉と脂について活用を進める。肉は交配、産卵、ふ化、飼育、食肉処理、市場化の流れをつくることが重要。食肉処理に関しては、本年度町営の施設建設を予定している。あとは町が誇る居酒屋群と連携し、名物料理開発や通販、ふるさと納税返礼品としての活用など、出口を確保していきたい。脂についても化粧品への活用が進んでおり、市場化の中心になることが期待されている。

 ■交通の要衝として町内には多くの企業や工場がある。今後の雇用確保や経済振興をどう考えるか。

 都市計画上の線引きの話が見直されれば、まだまだ大型の企業誘致ができると思っている。むしろ心配なのは雇用で、人手不足が身近なところで顕在化している。ミスマッチが一番の課題なので、役場が求人・求職の機能を持ち、情報の一元化、雇用のマッチングを推進していきたい。近い将来には役場の中にハローワークを設置したい。

 ■ベッドタウンとしての町の発展を象徴する町内の住宅団地に高齢化の波が迫っている。行政の対応は。

 子どもが巣立ち、夫婦だけの世帯が増えれば、いずれ1人暮らし高齢者世帯の発生、空き家発生とつながる。高齢者の豊かな経験を生かす機会や場所をつくることで健康寿命を延ばすSGK(スーパーシニア・メイクス・グレート・基山)事業を2年前に始め、戸建て住宅貸し出しを仲介する国の制度にもいち早く手を挙げた。このほか町内では、1人親世帯、外国人世帯が急増している。子どもたちの放課後の居場所づくりでは、モール商店街内のまちなか公民館や、ダンススクール開設など官民で進めている。昨年初めて草スキー国際大会を開き、外国人との交流の場を設けた。これらの事象に対する取り組みがうまくいけば、高齢者でも、1人親でも、外国人でも暮らしやすい町として、全国のモデルとなるはずだ。

 ■隣接する鳥栖市は人口増が続く一方、基山町は近年人口減が続いてきた。対応策は。

 もっと住宅を確保していくことが重要。そのために旧町役場跡地にPFI方式での子育て世代向け住宅を造るよう検討している。空き家をリノベーションした移住体験住宅や、住宅取得補助金にも取り組み、好評だ。住宅施策のベースになる都市計画上の市街化区域と調整区域の線引きについても見直しが必要で、関係部署との協議を始めている。町内には福岡で働いている人がたくさんいて、そのパイプは強固だ。その特性を生かし、佐賀と福岡をつなぐ、先兵的な役割を果たしたい。国指定特別史跡「基肄(きい)城」や町内の寺院など歴史や文化を感じられるパワースポット、今後完成予定の観光農園のほか、広くて無料の駐車場付きの体育施設が充実していることも生かしたい。現代は「モノよりコト」。人生の節目で訪れる場所としてリピーターを獲得できれば、その延長線上に移住、定住があると思う。

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