有田焼を品定めする中国からの旅行客。100台以上の大型バスに分乗して訪れる日もある=西松浦郡有田町の有田ポーセリンパーク内の香蘭社

 有田焼の欧州での再評価と米国への進出計画。創業400年の今年、関係者は並々ならない意欲とともに、切実さをにじませる。

 「海外進出は生き残りをかけたものになる」。こう話すのは、県の米国市場開拓支援事業に参加する有田焼商社大慶の森義久社長(68)。バブル崩壊後、業界では売り上げの減少が続く。消費低迷や少子化で、国内需要の伸びも見込めない。「今、何らかの手を打たないとじり貧になる。県の支援はありがたいこと」

 後継者の30代の息子たちをはじめ、産地の若い世代にとっても貴重な財産になると考えている。「異なる文化の中で売れ筋を見極めるなど、難しい取引経験は国内でも生きる」

 2013年に佐賀県の400年事業プランが策定された際、輸出額は産地全体の売り上げからみれば、わずか1%程度。そこからの積み上げは容易ではない。

 「商談が決まったものもあるけれど、投じた県費を回収できるほどの成果が出たとは、まだまだ言えない」。県有田焼創業400年事業推進グループリーダーの志岐宣幸産業労働部理事(57)は、窯元・商社の欧州出展を支えてきた4年間をこう振り返る。「ただ、事業を始めたころに比べ、品質を一定浸透させることはできたという手応えや将来の可能性は感じている」。今後の事業者の取り組みに期待を寄せる。

 海外に挑むと、今までのものづくりの単純な延長ではなくなる。新しい生地を開発したり、複雑な形状の型を作ったり、新たなアプローチが必要になる。有田焼産地では作業工程を分業している窯元も多く、挑戦が広く産業に波及し、活気づくのが理想の姿だ。

 産地では、海外に打って出るばかりでなく、外国人旅行客を取り込もうとする動きも本格化している。

 残暑が続く8月下旬、西松浦郡有田町の有田ポーセリンパークに、中国からの団体客が続々と降り立った。長崎や福岡に寄港した客船から、多い日には100台を超す大型バスが列をなす。老舗有田焼メーカーの香蘭社の店舗では、飾り皿や花瓶、食器などを品定めする家族連れや接客担当の中国語が飛び交っていた。

 徳永陶磁器(有田町)は、日本と中国で焼き物を学んだ外国人社員をコーディネーターに、訪日客が長期滞在し、焼き物作りに没頭できる事業に取り組んでいる。元の社員寮を活用したゲストハウスには米国やカナダ、香港など40カ国以上からの利用があった。

 関係者は口をそろえる。「滞在した人たちがそれぞれの母国で有田焼の奥深さを伝えてくれれば、行ってみようと思う人も増えてくるかもしれない」。産地の試みは続く。

■訪日外国人旅行者数

 政府は東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年に訪日外国人旅行者数を4000万人に増やし、消費額を8兆円に引き上げる新観光戦略を3月に策定、いずれも15年の2倍超を目標にしている。観光庁の推計では今年上半期(1~6月)の外国人旅行者は1171万3800人で、前年同期に比べ28.2%増えた。国・地域別では中国の307万6600人が最多で、次いで韓国238万3000人、台湾215万5800人。

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